2020 Fiscal Year Annual Research Report
Deciphering and manipulating molecular codes for glycosylation in the protein secretory pathway
Project/Area Number |
20J23703
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
齋藤 泰輝 名古屋市立大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 糖鎖修飾 / FUT9 / 分子暗号 / Lewis X / 糖転移酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、フコース転移酵素9(FUT9)によるタンパク質特異的な糖鎖修飾のメカニズムを明らかにすること、およびFUT9の局在メカニズムを解明することを目指して研究を行った。Lewis X修飾の度合いを定量的に評価することにより、LAMP-1に組み込まれている分子暗号が連続した29残基からなることを突き止めた。この分子暗号を導入することでエリスロポエチンのようなモデル糖タンパク質に効率的にLewis X修飾をもたらすことができた。この分子機構を解明するために、試験管内でのFUT9によるLewis X修飾アッセイを試みた。その結果、分子暗号を組み込んだモデル糖タンパク質に特異的にLewis X修飾が起こることが明らかになった。この結果は、分子暗号がFUT9との直接的な相互作用を通じてLewis X修飾をもたらすことを示唆している。一方、FUT9が細胞内において局在するメカニズムを詳細に調査するために、FUT9の細胞内分布を蛍光タンパク質によって可視化した。CHO-K1細胞に発現したFUT9は、点状にゴルジ体の付近に観察され、ガラクトース転移酵素(GalT-I)のような典型的なゴルジ体マーカー分子とは共局在しないことが示された。さらに、FUT9とGalT-Iのキメラ変異体を用いた実験から、FUT9の細胞内局在が膜貫通領域とその付近の領域によって規定されていることも明らかとすることができた。この結果は、本糖転移酵素が細胞内において独自の空間を占有して局在している可能性を示唆している。こうしたFUT9の細胞内局在の決定因子を明らかにするために、近接標識法を駆使してFUT9と局在を共にするタンパク質の検出を試みた。その結果、FUT9とGalT-Iの近傍に存在するタンパク質の間には有意な違いがあることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分子暗号に依存してLewis X修飾が起こる分子メカニズムを調べるために、モデル糖タンパク質を基質として、試験管内でFUT9が触媒するフコース転移活性の評価を行った。その結果、分子暗号を組み込んだモデル糖タンパク質に特異的にLewis X修飾が起こることを突き止めた。この結果は、分子暗号がFUT9との直接的な相互作用を通じてLewis X修飾をもたらすことを示唆している。 一方で、FUT9のCHO-K1細胞内における局在を観察することにも成功している。すなわち、蛍光タンパク質を用いて可視化されたFUT9はゴルジ体の付近において点状に観察され、GalT-Iのような典型的なゴルジ体マーカー分子とは共局在しないことを明らかとすることができた。さらに、FUT9とGalT-Iのキメラ変異体を用いた実験から、FUT9の細胞内局在は膜貫通領域とその近傍の領域によって規定されていることを示す結果を得た。以上の知見は、FUT9が細胞内において独自の空間を占有して局在していることを示唆している。FUT9の近傍に存在するタンパク質を調査した結果、本酵素と対照として用いたGalT-Iとの間で、標識されたタンパク質に有意な違いがあることを見出した。この結果は、糖転移酵素の近傍に存在する分子の情報に基づいて酵素が局在する細胞内の特定の空間を定めることができる可能性を示唆するものである。 以上を総合して、研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度実施した研究の結果から、FUT9と局在を共にするタンパク質が浮き彫りになったことをうけて、本年度はそれらのタンパク質発現をノックダウンすることによりもたらされるFUT9の局在の変化とLewis X修飾への影響を調査する。これにより、FUT9の局在を規定することを通じてLewis X修飾を制御するタンパク質の同定を試みる。さらに、糖転移酵素の近傍に存在する分子の情報に基づいて細胞内の特定の空間を定められる可能性が浮上したことから、FUT9とGalT-I以外の糖転移酵素についても近傍タンパク質の調査を実施する。一方、糖転移酵素も分泌タンパク質と同様に小胞体で生み出されて分泌経路上を移動し、ゴルジ体の特定の領域に至るものと想定される。そこで、上記の実験と並行して、これらの酵素が細胞内を移動して特定の領域に局在するに至るまでの間に辿る経路を観察する手法を開発する。糖転移酵素同士が会遇するか否かをこうした移動経路を含めて調査することで、ゴルジ体における糖転移酵素のネットワークを探索することを試みる。 以上の研究を通じて得られる知見に基づいて、糖転移酵素が特定の細胞内空間に局在して機能するメカニズムを考察する。
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