2021 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属硫化物におけるナトリウム含有型活物質モデルの新規構築
Project/Area Number |
20J23722
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
奈須 滉 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | バルク型全固体電池 / ナトリウム二次電池 / 遷移金属硫化物 / 構造解析 / 正極活物質 / 固体電解質 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、全固体電池において、高容量・高可逆な作動が可能なNa2FeS2正極活物質を開発した。さらに、その充放電機構の解析によって、FeとSのどちらもが酸化還元種として寄与することが高容量の原因となっていることを明らかにした。本年度では、より詳細な解析を進め、Na2FeS2をモデル構造として更なる電極特性向上のための設計指針を提案した。具体的には、充放電時の反応経路解析、構造変化、酸化還元種の相関を評価し、酸化還元が結晶構造へ与える影響について解析した。Na2FeS2では、初期の1電子反応の領域では、Feが主な酸化還元種となっており、FeS4四面体によって形成されるホスト構造が大きく変化しないトポタクティックな反応が観測された。これによって、充放電を通して初期の高いイオン拡散性を示す構造が維持されること、また充電反応と放電反応の対称性が高くエネルギー損失が低いことが明らかになった。ここから、電池の高電流密度下での作動においては、このトポタクティックな構造変化の利用が重要であることが分かった。 また、電池全体の高出力な活物質の特性を十分に発揮させるために、電池部材全体の最適化についても検討した。全固体ナトリウム電池においては、一般的な固体電解質として用いられているNa3PS4が負極側界面で厚い界面反応相を形成し、電池性能が劣化することが報告されている。この原因として、電子伝導性の還元生成物Na3Pが原因であることを観測し、電子伝導性の還元生成物を生じないNa3BS3を利用することで、電池性能の劣化を抑制可能であることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、Na2FeS2の充放電中の構造変化と電子状態変化に着目した解析を行った。本年度は、Feの酸化還元が主な電位領域で、トポタクティックな構造変化を示し、この変化中もイオン伝導経路が維持されていることを明らかにした。この構造がより広い電位・容量下で維持されることで、活物質の高出力化が期待できることから、新たな活物質材料の設計指針を示すことができたと考えられる。 また、新たに負極に対して安定な界面形成が可能なNa3BS3固体電解質を見出しており、この電解質を全固体電池に適用することで、ナトリウム金属負極などの低電位で作動する負極利用時の劣化を抑制可能であることを明らかにした。以上から、当初の期待通りの結果が得られたといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き鉄系硫化物Na2FeS2に着目し、中心元素のFeを異なる元素に置換することで、電極特性の向上を計画している。置換元素としては、イオン半径が小さく、より許容可能な酸化数が広いMnやVなどに着目し、イオン伝導経路の拡張によるイオン伝導性の更なる向上と、トポタクティックな反応領域の拡張を試みる。 併せて、固体電解質と負極活物質の開発・選定を行い、当初の予定通り、フルセル相当の電池において、開発した活物質を適用させることで、高電流密度下で高い電極特性を示す実用的な電極活物質のモデル構築を目指す。
|