2021 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物mRNAのキャップ構造特異的なN6メチルアデノシン修飾の生合成と機能解析
Project/Area Number |
20J30002
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
穐近 慎一郎 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
N6-メチルアデノシン(m6A)修飾は真核生物のmRNAに豊富な化学修飾であり、内部におけるm6A修飾はmRNAの安定性や翻訳を制御することで細胞の様々な機能に関与している。一方で脊椎動物では5'cap構造に続く1塩基にもm6A修飾が存在するが、その生合成や生理学的な意義は未解明であった。申請者はこれまでの研究過程において生合成を担う遺伝子(CAPAM)を同定し、cap構造におけるm6A修飾形成過程を解明した。また生理学的な意義として細胞の酸化ストレス応答に関与していること、およびm6A修飾がmRNAの翻訳効率を向上していることを見出した。 本研究ではm6A修飾がどのような遺伝子の発現を制御することで細胞の酸化ストレス応答に寄与しているのか、またm6A修飾がどのような因子を介してmRNAの翻訳効率に寄与しているのかを解明することで、cap構造におけるm6A修飾の意義の解明を目指す。 本年度は、まずm6A修飾がmRNAの翻訳効率に寄与する機構としてmRNAの核外輸送に着目し、検証のための次世代シーケンシング解析を行った。またm6A修飾を特異的に認識するRNA結合タンパク質の候補に関して、細胞内のmRNAのm6Am修飾を認識しているのかを検証するための実験手法について引き続き検討を進めた。 またCOVID-19の感染拡大に考慮して、新型コロナウイルスのRNAメチル化酵素の阻害剤の探索も並行して行った。共同研究を行い、すでに約20万化合物からのスクリーニングを終え、複数のリード化合物を得ている。得られたリード化合物については酵素特異性などの高次評価を行い更に絞り込みを行った。また共同研究を行い培養細胞において新型コロナウイルスの増殖を抑制できるか試験した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
m6Am修飾がmRNAの翻訳効率に寄与するメカニズムとして、m6Am修飾がmRNAの核外移行に関与する可能性に着目し、次世代シーケンシング解析を行った。その結果おそらくm6Am修飾の有無はmRNAの核外輸送には関与していないことが示唆されたため、m6Am修飾がmRNAの翻訳そのものに寄与していることが示唆された。そこでタンパク合成速度を直接解析するために、非天然アミノ酸を用いたパルスラベルを行った結果、m6Am修飾はタンパク合成速度を向上させていることが示唆された。より詳細な分子機構を解析するためにレポーター翻訳系の構築を進めている。予備実験の結果、m6Am修飾による翻訳促進を再現するようなレポーター翻訳系の構築が期待されたため、更なる検証を進めて分子機構の解明を目指す。 m6Am修飾を特異的に認識する候補RNA結合タンパク質については野生型および遺伝子欠損細胞から安定して免疫沈降し、共沈した特定のRNAを検出ことが可能となった。今後は次世代シーケンシング解析を行うことで網羅的に標的RNAを探索し、m6Am修飾との関係性を解明することを目指す。 新型コロナウイルスのRNAメチル化酵素の阻害剤の探索では、ヒト内在の酵素に対する非特異的な阻害効果を測定するアッセイ系の構築に成功し、より期待値の高い候補化合物の絞り込みに成功した。また得られた化合物が培養細胞において新型コロナウイルスの増殖を抑制できるか試験しており、いくつかの化合物においてウイルス抑制効果を確認することに成功している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度で構築を進めたレポーター翻訳系について更なる検証を進め、内在の遺伝子発現を正しく反映できているかの検証を進める。妥当性が確認でき次第、試験管内翻訳系を用いることで、m6Am修飾による翻訳促進にいおて重要な機能を担っている因子の同定を進め、その分子機構の解明を目指す。 m6Am修飾を特異的に認識する候補RNA結合タンパク質については次世代シーケンシング解析を行い、細胞内においてもm6Am修飾を特異的に認識しているのか、また標的となっているRNA種の同定を進め、生理学的意義の探索を行う。 新型コロナウイルスのRNAメチル化酵素の阻害剤の探索では、得られた阻害化合物とウイルス酵素の共結晶構造解析を行うことで、より活性の高い化合物の開発を目指す。
|
Research Products
(4 results)