2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20J30004
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
岡畑 美咲 甲南大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 線虫 / C. elegans / 多型株 / 温度順化 / カルシウムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
温度は生体反応に直接影響を与える重要な環境情報であり、生物は温度変化に適応するためのメカニズムを備えている。本研究では動物が温度に応答するための分子生理機構の解明を目指し、モデル動物である線虫C. elegansの低温耐性・低温馴化現象を指標に神経系の解析を行なっている。低温耐性とは、野生株を25℃で飼育後2℃に移すと死滅するのに対し、15℃で飼育後2℃に移すと生存できる現象である。また、25℃飼育後5時間15℃に置くことによって2℃で生存できる低温馴化現象を示す(Ohta et al., Nature commun)。これまでに、低温馴化現象には頭部に存在するADLとよばれる1対の感覚ニューロンが温度を受容することで低温馴化が制御されることを報告した。さらに、このADL温度受容ニューロンの温度応答性は上流に存在する酸素受容ニューロンURXからの酸素情報に影響されることが分かってきた(Okahata et al., Science Advances, 2019)。本研究では線虫多型株をもちいて、Ca2+インディケーターを用いて、酸素と温度を変化させた際の神経回路動態の解析を測定できる実験系を確立したため、神経活動の定量化解析をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による緊急事態宣言により、4月から6月下旬まで大学への立ち入りができなかったため、その期間の実験をおこなうことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
ADL温度受容ニューロンは低温馴化を制御し、ADLが関わる低温馴化は飼育酸素濃度に影響されることが分かってきた (Okahata et al., Science Advances, 2019)。一方で、この神経回路において、酸素と温度の情報がどのように「区別・識別」されているかは未解明である。そこで、酸素と温度を「区別・識別」するニューロン内の分子生理機構や神経回路動態を調べるために、Ca2+インディケーターを用いて、酸素と温度を変化させた際の神経活動の測定を行なっている。これまでに異なる酸素濃度で飼育した線虫のADL温度受容ニューロンの神経活動を測定するための実験系を確立した。具体的には、酸素濃度を制御する装置をイメージング用の顕微鏡に取り付け、低酸素濃度と高酸素濃度下でADLの温度変化に対する神経活動を光学的に検出する装置を開発し、実際に異なる酸素濃度で馴化させた野生株のADLの温度応答性を測定することができた。今後、この実験系を用いて、酸素濃度依存的な低温馴化を制御する遺伝子の変異体のADLの温度応答性を測定する予定である。
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Research Products
(7 results)