2021 Fiscal Year Annual Research Report
Effectiveness of cognitive-behavioral therapy and interventions to increase self-compassion for body dissatisfaction
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20J40026
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高橋 恵理子 早稲田大学, 人間科学学術院, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 身体不満足感 / ボディイメージ / セルフコンパッション / 認知行動療法 / ウェルビーイング / 摂食障害 / 身体醜形障害 / 外見 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に実施した研究により、自己の身体に関する不適応的な態度、知覚、行動から成るネガティブボディイメージと、それらが適応的なポジティブボディイメージに影響を及ぼす認知的要因には独自のものがあり、それぞれに有効なアプローチ法を検討する必要があることが示された。そこで2021年度の研究では、未だ十分に明らかにされていないポジティブボディイメージの増加に影響を及ぼす認知的要因を明らかにすることを目的とした。 まずは、ポジティブボディイメージの発生・維持に影響を及ぼす認知的要因を測定するアセスメントツールを開発した。その結果、「受容」と「解放」の2因子17項目から成る「ポジティブボディイメージスキーマ尺度」が作成され、その信頼性と妥当性を支持する結果が得られた。本研究によって開発された尺度の項目内容は、介入において増加が必要となり得るスキーマの内容を具体的に示していることから、ポジティブボディイメージの予測因子に関する研究の発展にとどまらず、臨床場面においてもポジティブボディイメージの心理教育を行う際に活用されることが期待される。 次に、自己の外見に対するネガティブな態度である「自己批判」とポジティブな態度である「自己へのやさしさ」が身体不満足感、自尊心、感情に及ぼす影響を実験的に検討した。その結果、自己批判を低減した群では、身体不満足感が有意に低下し、自尊心は有意に増加した。しかしながら、自己へのやさしさを増加させることの効果は明確に示されなかった。本研究によって、ネガティブボディイメージの減少と自尊心あるいは自己に対するポジティブ感情の増加には、自己批判的思考の減少が重要であることが示唆された。 本研究は、青年期や成人前期における適応的なボディイメージの獲得を促し、健康的な食行動や対人関係機能の向上を目的とする心理的支援法の発展の基礎となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は2020年度に引き続き、COVID-19の感染拡大による影響が長引いたため、申請時に予定していた大学生を対象とする対面での調査や実験を実施することができなかった。しかしながら、オンラインによる遠隔での調査および実験に切り替えることによって、当初の予定通りに研究計画を遂行することができた。このような変更に伴い、研究協力者のリクルートにかかる費用が追加となった。費用を捻出するために、2022年度開始予定であった長期的な介入研究のデータ収集を2021年度から開始する必要が生じた。2021年度の研究計画の遂行に加えて、2022年度の研究も前倒しで進めることは、時間的に困難な局面もあったが、無事に2021年度における研究の完了に加えて、2022年度中に収集予定であったデータの約3分の1のデータを収集し終えた。 これまでの研究成果は、2021年6月に開催された第16回国際行動医学会において、ポスター発表を行った(題目:Relationships Between Self-Compassion and Attitudinal Body Image in Japanese Women)。2021年7月にも第7回アジア認知行動療法学会においてポスター発表を行った(題目:Development of a Scale to Measure Emotional Distress of Body Image in Japanese Adult Women and Its Relation to Psychosocial Factors)。また、2021年度に実施した研究の成果を論文にまとめて、学会誌「青年心理学研究」に投稿した(題目:ポジティブボディイメージスキーマ尺度の開発)。これらの研究成果を踏まえて、本研究の進捗状況は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の感染拡大を踏まえて、2022年度も引き続き実験は全面オンラインで実施する。2022年度の研究では、ネガティブボディイメージの低減とポジティブボディイメージの増加に有効な心理的介入法の効果を検証する。 心理的介入法は、2020年度から2021年度の研究結果に基づき考案した。自己の外見に関する批判的思考の低減を目的とした認知行動的介入と自己の身体への肯定的態度の増加を目的としたセルフ・コンパッションに焦点を当てた介入から成る。 実験参加者の選定基準は、18歳から34歳であり、心身ともに健康で標準体重の範囲内にあるが、外見に不満があり、これを心理的に改善したいと求める女性とした。このような女性を自己の外見に関する批判的思考を低減させる群(negative group: N群)、自己批判的思考の低減に加えて、自己の身体に対する肯定的態度を増加させる群(N+positive group: N+P群)、いずれの介入も行わない群(control group: C群)に振り分けた。本研究のサンプルサイズは55名程度を予定しているが、2021年度中に15名(N群7名,N+P群8名,C群0名)のデータ収集を完了した。2022年度は残りの40名程度のデータ収集を行う。 介入期間は4週間程度であり、実験手続きは次の通りである。始めにセルフコンパッション、ボディイメージ、ウェルビーイングの質問紙を用いた事前測定を行う。次に、N群では自己批判の低減を目指す認知的課題を行い、N+P群ではN群の課題に加えて、自己へのやさしさの増加を目指すイメージ課題を行う。C群ではいずれの課題も行わない。事前測定から約4週間後に、再びセルフコンパッション、ボディイメージ、ウェルビーイングの質問紙から成る事後測定を行う。加えて、実験終了から概ね1カ月後と3カ月後にフォローアップ調査を行う。
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