2020 Fiscal Year Annual Research Report
慢性期脊髄損傷霊長類モデルを用いた神経回路再編による免疫機構破綻メカニズムの解明
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20J40101
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
吉野 紀美香 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 免疫不全 / 脊髄損傷 / コモンマーモセット / 自律神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄損傷後長期間が経過した患者の死亡原因の1位は感染症である。本研究では、霊長類であるコモンマーモセット脊髄損傷モデルを用いて、損傷後急性期及び慢性期における免疫システム、交感神経、副腎系の機能動態を調べ、脊髄損傷による免疫不全の霊長類モデルを構築するとともに、免疫変容と感染症を引き起こすメカニズムを明らかにすることを目的とした。 第5~6胸髄より上位の脊髄を損傷した患者は,排便不良等で直腸に刺激が入った際に,自立神経反射(過反射)が起こり血圧の急上昇及び徐脈が起こる。げっ歯類ではこの過反射が繰り返し起こることで免疫不全が起こることが証明された。排便不良の再現は実験的に直腸内バルーンでの刺激を用い、血圧及び脈拍測定は非加温で侵襲性のない非観血的方法を用いた。健常マーモセット5頭では、刺激後(1min,2min,3min)測定を行ったところ,刺激直後に心拍が上がり血圧には大きな変動は見られなかった。 脊髄損傷免疫不全モデルは、深麻酔下にて第3-4胸髄間を完全に切断し作成した。損傷手術後1日目、2日目に自律神経反射を調べるための直腸刺激を行った。損傷前は刺激により脈拍の上昇がみられたが、損傷後は大きな変化が見られなかった。 げっ歯類モデルと違い霊長類モデルでは手術による侵襲性が大きく、術後15週までの慢性的データ取得を目的とするなか、いずれの個体も慢性期まで生存しなかった。そこで2年度目は、第3-4胸髄間の脊髄の背側のみを切断する背側切断モデルの作成をこころみる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マーモセットの免疫動態を調べるための適合抗体及び試験薬の検討を行ったところ、マウスと異なり、マーモセットサンプルの検出に使用できるツールが乏しい中、ヒト用C反応性蛋白(CRP)検査や抹消血中のCD4T細胞・CD8T細胞・CD2T細胞・NK細胞の検出に成功した。 進捗が遅れた一番の理由は、第3~4胸髄間の完全切断モデル作成に時間を要したことである。手術後15週目まで免疫動態及び自律神経系の制御を追う計画であったが、いずれの個体も術後3~7日で死亡した。手術手技が安定しない初期の頃に作成したモデル1頭は、運動障害の程度も軽く自律神経過反射も誘導できず、再手術を行ったが髄節の特定に誤りがあることが分かった。現在は髄節の特定や術後の自傷の予防など、再現性の高いモデル作成の基礎が出来ている。次年度は、損傷様式を第3~4胸髄間背側切断に変更し、運動機能障害をひどく起こさないモデルとした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度まで作成してきた第3/4胸髄完全切断モデルは、手術における侵襲性が高く慢性期までの解析に用いることができなかった。本年度はモデルの作成方法を再検討し、第3/4胸髄間の背側部分のみを切断したモデルでの解析を行う。交感神経刺激法及び血圧脈拍の測定はこれまでに確立した方法を用い、末梢血採血により免疫細胞のポピュレーションの変化を追う。刺激直後の免疫動態を瞬時にとらえることはマーモセットを用いた実験上やや困難が予想されるため、長期的に糞便サンプリングを行い腸内フローラの変遷をみることを実験に追加する。 損傷後2週目、8週目に経時的にサンプル解析を行い、慢性期にあたる15週目で実験殺を行う。片肺の組織形態学的病理解析、片肺懸濁の生菌培養解析、脾臓から細胞を採取し免疫細胞のポピュレーションを確認する。 慢性期個体で呼吸器疾患等が発現し、解析により免疫破綻が示唆された場合、交感神経から脾臓への新たな神経投射が増えている可能性が考えられる。そこで損傷より下位における脊髄―脾臓間の神経接続の可塑的変化について、実験殺より4-5日前に脾臓に経シナプス逆行性神経トレーサーである蛍光タンパク発現仮性狂犬病ウイルス(PRV)あるいは狂犬病ウイルス(弱毒固定株)を感染させ、回路の接続様式の変化を明らかにする。 免疫細胞にはその局在に日内変動があることが齧歯類で報告されたばかりである。ノルアドレナリンが細胞動態を制御し、活動期の夜間に免疫器官に免疫細胞をとどまらせ、昼間に抹消へと遊走させることが明らかとされた。本モデルは交感神経と免疫制御のクロストークが脊損後に異常をきたすであろうと仮定したものであり、免疫細胞の日内変動が昼行性のマーモセットではマウスと逆にみられることを確認する。方法は4時間おきに静脈より24時間採血を行い、CD4T細胞・CD8T細胞・CD2T細胞・NK細胞の変動をFACSで確認する。
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