2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20J40228
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
徳田 恵美 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | がん / リン脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
数多くのがんにおいてリン脂質代謝酵素とそれを介したシグナル伝達経路の異常が報告されており、リン脂質はがんにおいて重要な役割を果たしていると考えられている。しかし、実際のがん組織においてリン脂質を測定した報告はほとんどない。そこで、申請者らはがん組織において様々なリン脂質の測定を行った。測定を進めていく中で、申請者らはがんで特異的に増加する新規のリン脂質を発見した。そこで本研究はこの新規リン脂質について1、生成機構の解明および2、がんの悪性化における新規生体脂質の機能解明の2つを目的としている。 2020年度はまず培養細胞を用いた新規リン脂質生成酵素のスクリーニング系を構築した。この系を用いてスクリーニングを行った結果、複数の生成酵素を同定することに成功した。そのうちの1つの酵素について現在解析を進めているところである。まず、複数のがん細胞株において生成酵素の発現量と新規リン脂質量を測定し、両者が相関していることを明らかにした。そこで、発現の低いがん細胞株において生成酵素の発現誘導株を作製した。この細胞株において生成酵素を発現誘導すると、それに伴い新規リン脂質量が増加することを明らかにした。また、生成酵素を発現誘導した細胞では細胞運動能が上昇することも明らかにした。さらに、in vitroで新規リン脂質を精製する系を構築した。この系を用いて精製した新規リン脂質をいくつかのがん細胞株に加えたところ、生成酵素を発現誘導した時と同様に細胞運動能が上昇することも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の1つであった新規リゾリン脂質生成酵素を複数同定することに成功した。また、新規リゾリン脂質およびその生成酵素ががん細胞の運動能を制御していることも明らかするなど、新規リゾリン脂質ががん細胞の特性に関与していることも明らかになってきている。よって、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
新規リゾリン脂質およびその生成酵素が細胞運動能以外のがん細胞の特性にも関与しているかを検討する。具体的には増殖能、細胞死抵抗性、細胞形態などに変化があるかを調べる。また、生成酵素の発現誘導株を用いて、マウス生体内においてがんの発生、転移に新規リゾリン脂質が関与するかも検討する。 さらに、これまでに新規リゾリン脂質を精製することに成功している。そこで精製した新規リゾリン脂質との結合たんぱく質を探索し、新規リゾリン脂質がどのようなシグナル伝達経路に関与しているかを検討する。
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