2022 Fiscal Year Annual Research Report
光化学系Iの2つのアンテナタンパク質の機能分化から解き明かす光エネルギー分配原理
Project/Area Number |
20J40231
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
渡辺 麻衣 東京都立大学, 理学研究科, 研究員
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Project Period (FY) |
2020-10-12 – 2024-03-31
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Keywords | 超分子複合体 / 光合成 / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くのシアノバクテリアはアンテナとしてフィコビリソームをもつ。フィコビリソームには、コアとロッドからなるCpcG-PBSとロッドのみからなるCpcL-PBSがある。CpG-PBSとCpcL-PBSの両方がPSIアンテナとして機能するが、2つの異なるアンテナがどのように使い分けられてPSIへエネルギー伝達し ているのだろうか。 光合成の電子伝達には直鎖状と環状の2つの経路が存在する。この研究では、CpcG-PBSは直鎖状電子伝達を担う光化学系Iへ、CpcL-PBSは環状電子伝達を行う光化学系Iへ光エネルギーを分配するという、2つの異なる電子伝達系に対応したアンテナの使い分けが行われているという作業仮説を立てた。それを検証し、CpcG-PBSとCpcL-PBSの光化学系Iアンテナとしての使い分け原理を明らかにし、環境に応じたフィコビリソームから光化学系Iへのエネルギー分配最適化の分子機構と生理的役割の解明をめざす。 これまでにモデル生物として使用してきた、Anabaena sp. PCC 7120で、CpcG-PBS、CpcL-PBSそれぞれに特異的なサブユニットである、CpcG、CpcLを破壊した変異体と、CpcLを過剰発現した変異体のCpcL-PBSと光化学系I超複合体の形成、それぞれのフィコビリソームへの影響を解析した結果を論文にまとめ、発表した。CpcG、CpcLの量比が超複合体の形成を制御していると考えられたため、CpcG、CpcLの発現解析を行なった。この結果を論文にまとめている。 共同研究により、Anabaena以外のシアノバクテリアにおける、CpcLの制御について新たな知見が得られたので、それについても論文にまとめている。また、海洋性シアノバクテリアのCpcL-PBSの機能について調べるため、変異体の作製を行ない、発現解析のためRNAseqを準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究結果を論文として発表できた。予定していた研究計画に加えて、共同研究により新たに始めた研究があり、進捗は少し緩やかである。しかし、それぞれについてこれまでの研究結果をまとめる段階に入っており、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究により行なっている、海洋性シアノバクテリアのCpcLの機能についての解析を進める。当初の研究計画である窒素欠乏によるcpcLの制御について論文にまとめ、投稿する。アンテナによる光合成電子伝達の制御について検証するため、CpcG、CpcL変異体を用いた光合成電子伝達の測定を開始する。
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