2021 Fiscal Year Annual Research Report
聴性脳幹反応を用いた自閉スぺクトラム症と脳幹機能との関連に関する研究
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20J40247
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Research Institution | NTT Communication Science Laboratories |
Principal Investigator |
藤平 晴奈 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 柏野多様脳特別研究室, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 両耳間レベル差の弁別閾値 / 両耳間時間差の弁別閾値 / 両耳間位相差刺激に対する脳幹反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)は、社会的コミュニケーションの障害や、限定された反復的な行動様式を特徴とする。ASD者では聴覚特性の特殊性が報告されており、音の方向を知覚する能力(音源定位能力)や、音が混在する環境下で特定の音を聴取する能力が低下することが知られている。一方で、ASD者と定型発達者とでは、脳幹において構造的に違いがあることが報告されている。本研究では、ASD者の音源定位能力の低下に着目し、ASD者と定型発達者における音源定位にかかわる脳幹における処理機能の違いを定量的に検証することを目的とする。 今年度は、昨年度に予定されていた(実験1)ASD者の音源定位能力低下を検証する実験と、(実験2)定型発達者を対象とした両耳間位相差刺激に対する脳幹反応測定を実施した。 実験1では、ASD者と定型発達者から、音の両耳間レベル差と両耳間時間差の弁別閾値を測定した。その結果、ASD者が定型発達者に比べて、両耳間レベル差に対する閾値が低く、両耳間時間差に対する閾値では、ばらつきが大きいことが明らかになった。音の両耳間レベル差と両耳間時間差は、音源定位の手がかりとなることから、ASD者の音源定位能力の低下が両耳間レベル差と両耳間時間差への感度の低下から生じている可能性が示された。 実験2では、両耳間位相差刺激に対する脳幹反応と皮質反応、知覚感度を測定し、それらの関連性について検証した。その結果、すべての指標の間で有意な相関が認められた。このことから、両耳間位相差刺激に対する脳幹反応を、音源定位にかかわる脳幹における処理機能の定量的な評価指標として今後用いることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新型コロナウイルスへの感染予防対策が整い、ヒトを対象とした実験を順調に行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
両耳間位相差を変化させた刺激に対する脳幹反応と皮質反応、知覚感度を、ASD者と定型発達者から測定し、それぞれの指標において群間で比較をする。また、並行して今年度得られた音の両耳間レベル差と両耳間時間差の弁別閾値に関する論文を作成する。
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