• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2020 Fiscal Year Research-status Report

時間意識とそのメタファー的概念化に関する哲学的研究

Research Project

Project/Area Number 20K00004
Research InstitutionNagoya University

Principal Investigator

宮原 勇  名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90182039)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywordsフッサール / 内的時間意識 / 二重の志向性
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、まず本プロジェクトの第1段階 「フッサールの時間意識の分析に関する解明と、その概念化の問題点の究明」において、フッサール著作集の第10巻『内的時間意識の現象学』(Zur Phaenomenologie des Inneren Zeitbewusstseins, 1917) の分析を深めた。すでに研究代表者は「フッサール初期時間論の基本概念とアポリア(I)」(『名古屋大学文学部研究論集』 第61号、 pp.45-72, 2015年)を発表しているが、2020年度は「フッサール初期時間論の基本概念とアポリア(II)」(『名古屋大学文学部研究論集』 第62号、pp.65-87、2021年3月刊行)を執筆した。この論文においては、①フッサール初期の時間論の研究の深化、②時間意識の概念化に関する問題点の摘出、③フッサール時間論の概念装置に関する批判的究明を行うという研究局面に当たるものである。具体的にはフッサリアーナ第10巻『内的時間意識の現象学』の§39「過去把持の二重の志向性と意識流の構成」という章での「二重の志向性」の議論において、LaengsintentionalitaetとQuerintentionalitaetがフッサールの提示している図表の上ではどれに当たるかを解明した。John Barnett Brough の最新の英訳に従って、Laengs-をhorizontalと解釈したのなら、Querintentionalitaetは、左上から右下に対角線上に下降する「同じ一つの音に関する変様された諸過去把持の射映(Abschattung)の連続体」を指し示すという結論に達した。LaengsとQuerをどのように解釈するかは、フッサールの記述が一次元的図式の中で考えられているのか、二次元的図式の中で考えられているのかによって違いが出てくることを示した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

プロジェクトの第1段階 「フッサールの時間意識の分析に関する解明と、その概念化の問題点の究明」を「フッサール初期時間論の基本概念とアポリア(II)」(『名古屋大学文学部研究論集』 第62号、pp.65-87、2021年3月刊行)にて実施し、時間の「流れ」という比喩表現が一次元的図表によって図示されるとともに、フッサールの時間意識の分析では、上下軸の要素も加味されている。従って、二次元的な空間図表によって、時間意識の変遷が表現されることとなる。その場合、「時間の流れに沿って」という場合はフッサールは、向かって左から右へと伸びる水平の直線によって、表現されている。その場合、言語表現としては「~に沿って」生成する志向性という意味で、従来の翻訳では「縦の志向性」となっていた。しかし、実際には、水平の流れに沿った志向性ということなので、「水平の」ということは、「横の」志向性ということになる。そして、ドイツ語のQuer-という表現では従来の翻訳では「横断的」という意味で「横の」と訳されていた。しかし、フッサールの時間図表では、左上から右下へと下降する「斜かい」の射映変遷の流れがそれに当たるという結論が導き出された。これは大きな成果と言える。

Strategy for Future Research Activity

今後は、まずはHusserliana Bd.XのNr.50のテキスト(遺稿で翻訳なし)の詳細な分析を試み、その成果によって、Husserliana Bd.Xのすべての図表の統一的解釈を試みる。
そして、フッサールが使用している時間表現に関し、それがLakoffらのいう概念メタファーとしてどのような機能を果たしているかに関し、研究する。まずは、Hans BlumenbergのMataphorに関する議論を正確に捉えることにより、その洞察をフッサールの時間論の用語法に適用し、解明する。
時間に関する比喩表現に関して、日本語、中国語、モンゴル語、英語、ドイツ語などの言語ではどのような言い方が概念メタファーとして機能しているかをデータの収集とその分析によって、解明するという作業を展開する。

Causes of Carryover

2020年度はメタファーに関するデータ収集と処理に関する短期雇用の日にちが祝日の為に若干少なくなり、執行残額が生じた。

  • Research Products

    (2 results)

All 2021

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 2 results)

  • [Journal Article] フッサール初期時間論の基本概念とアポリア(II)2021

    • Author(s)
      宮原勇
    • Journal Title

      名古屋大学人文学研究論集

      Volume: 62 Pages: 65-87

    • DOI

      10.18999/jouflp.62.65

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] フッサールによるハイデガー批判の意味2021

    • Author(s)
      宮原勇
    • Journal Title

      名古屋大学哲学論集

      Volume: 2020号 Pages: 221-249

    • DOI

      10.18999/nagpj.2020.221

    • Peer Reviewed / Open Access

URL: 

Published: 2021-12-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi