2020 Fiscal Year Research-status Report
Social Ontology for Institutions
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20K00011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
倉田 剛 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (30435119)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 制度 / 社会存在論 / 規範 / 均衡としての制度 / ルールとしての制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インフォーマルな慣習からフォーマルな法規範までを含む「制度」(institution)の概念を、現代形而上学の一分野である「社会存在論」(social ontology)の観点から包括的に考察することをその目的とする。とりわけ研究代表者は、〈ルールとしての制度〉と〈均衡としての制度〉という二つの代表的制度観を調停しようとする近年の試みに対して、何らかの学術的寄与を成すことを目指している。 この研究を遂行するにあたって、ISOS (International Social Ontology Society)が主催する年次大会(2020年5月スイス、ヌシャテル)での発表を予定していたが、新型コロナウイルスの影響で大会は中止され、アクセプトされていた"The Unified Social Ontology and the Problem of Constitutive Rules"と題する発表を行うことができなかった。 コロナ禍で軒並み予定されていた研究会等が中止になるなか、2020年9月14日に基盤研究(B)「制度の複合的研究:経済学の哲学的基礎」(代表:野原慎司)のオンライン研究会で「規範としての制度:ウルマン=マルガリートの「不平等規範」を考える」と題する講演を行った。この研究会には「制度」の基礎に関心をもつ経済学者たちが多数参加しており、非常に有益な意見交換を行うことができた。その発表では、とくに標準的なゲーム理論では扱うことのできない「不平等規範」および「相対的立場の向上」(自らの利得を下げてまで相手の利得を下げる行動をとる)を論じたが、経済学者たちも同様の問題に一定の関心を寄せていることを再確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、「均衡としての制度」と「ルールとしての制度」という二つ制度観を、相関均衡という概念を軸にして調停しようとするF. グァラたちによる近年の試み(「社会存在論の統一理論」)を高く評価しながらも、彼らの「統一理論」は、従来のルール説に対する不十分な理解にもとづくと考えてきた。 上記した二つの発表(その一つは実現されなかった)において、「構成的ルールは統制的ルールに還元可能であり、理論的には不要である」とするグァラたちの主張には無理があることを示し、さらに「ルール説を主軸に据えたうえで、その「実効性」に関する欠点を均衡説によって補完する仕方で制度論の「緩やかな統合」を目指す」という本研究の目標に向けて前進することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は主に合理的意思決定理論(とくにゲーム理論)における制度観(均衡説)と、哲学/法学的な制度観(ルール説)との関係について考察を重ねてきたが、今後は実証的な社会科学(数理社会学や計量経済学)が制度をどう扱っているのかという問題に関しても、考察の範囲をやや広げて取り組んでいきたい。 そうすることで、近年の「社会存在論の統一理論」とは異なる仕方で、制度に関する基礎理論を構築することを目指すつもりである。
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Causes of Carryover |
2020年5月に参加予定だった国際学会(スイス、ヌシャテル)が中止されたために、旅費として予定していた予算の一部が執行できなかった。 次年度についてもコロナ禍の影響で、旅費としての執行は見通しが立たないため、関連図書の購入とオンライン発表に必要なOA機器への支出を計画している。
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Research Products
(1 results)