2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00013
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Research Institution | Mie Prefectural College of Nursing |
Principal Investigator |
安部 彰 三重県立看護大学, 看護学部, 准教授 (60516847)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 身体拘束(抑制) / 看護倫理 / 医療倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、医療における身体拘束の是非をめぐる規範的検討を基軸に据えつつ、その倫理的論点を網羅的・体系的に検討することにある。 研究2年目にあたる2021年度は、前年度にひきつづき国内の関連文献を収集しつつ、その一部について精査した。主な成果は、以下の2点である。 (1)国内の関連文献リストの増補。(2)身体拘束の倫理的論点の整理および検討。 (1)については、今後(本研究終了時までに)HP等なんらかの媒体において公開することにより、研究資料としてひろく活用に供する予定である。 (2)については、その成果の一部として、身体拘束にかんする倫理ガイドライン(『身体拘束ゼロへの手引き』)の検討があげられる。すなわち同ガイドラインでは、拘束の正当化要件として「切迫性」「非代替性」「一時性」の三要件を定めているが、これらは約言すると、「患者の生命・身体保護を目的とし、かつ代替手段がない場合の一時的な拘束は正当である」という規範をしめしたものである。だが現実にこの規範を充たしうるのは、急性期(の一部)の患者を拘束するケースのみであるとかんがえられる。したがって慢性期(たとえば認知症)の患者の拘束はやはり許容されない。しかし先行研究によれば、それにもかかわらず臨床では三要件の拡大解釈により不当な拘束が続いているとの指摘が散見される。では臨床ではいかなる拡大解釈がおこなわれているのか。三要件のうち、一時性と切迫性の正当性を否定するのは困難である。したがって、おそらく拡大解釈の対象となっているのは非代替性である。だが、かかる拡大解釈の温床となっているのはやはり、とくに深夜勤務帯における看護師の人手不足であるとかんがられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の自己評価としたのは、たしかに上述のとおり、国内の関連文献リストの増補および身体拘束の倫理的論点の整理および検討は進めることができたが、しかし残念ながら今年度は以上の成果を公にするまでにはいたらなかったからである。またその要因としては、COVID-19の流行が続くなか平時に増して授業準備をはじめとする教育負担が増え、またその他の学務の負担も増加したことにより、十分な研究時間が確保できなかったことがある。だがその他方で、勤務先大学で担当している看護倫理の授業では、本研究に関連する授業内容について、現役の看護師でもある受講生から有益な示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究3年目にあたる2022年度の課題は、以下の3点である。(1)前年度の研究成果の公表。(2)国内の関連文献の収集および精査の継続。(3)国内外の関連分研究の収集および精査。 (1)については、専門学会での報告・論文投稿・学術書の執筆など、さまざまな機会および媒体を活用して研究成果を公表する。 (2)については、前年度同様に進めていく。 (3)については、前年度の研究課題に挙げつつも、十分な成果をえるには至らなかったため、今年度はその遅れを取り戻したい。 また以上の課題遂行にあたり、今年度も引きつづき、諸学務の増加による研究時間の逼迫という物理的な状況に大きな変化はないが、しかしそのぶん工夫をして研究時間の捻出に努める。また今年度も引きつづき、勤務先大学では研究成果を反映させた授業をおこなうことで、本研究にたいする批評を得る機会を確保しつ、その精度をさらに高めていく。
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Causes of Carryover |
主な理由は、購入予定であった文献数が少なったことによる。そもそも想定していたよりも関連文献の刊行点数が想定よりも少なったこともあるが、不足分ふくめ今年度あらためて購入する予定である。
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