2022 Fiscal Year Annual Research Report
九鬼周造の全集未収録原稿等の整備・解読・解釈に向けて
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20K00021
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
川口 茂雄 上智大学, 文学部, 准教授 (90830050)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 九鬼周造 / 書簡 / J哲学 / 日本哲学 / フランス哲学 / アーカイヴ / 可能性 / 偶然 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナウイルス禍による社会活動の大幅な制限と同時期に始まった当研究課題であるが、当初予定よりも大幅な遅れが生じたなかで、昨年度に未発見・未公刊資料の発見の公表というひとつの大きな段階を経て、さらなる具体的な詳しい個別調査・解読が今年度には進められ、一定の進捗を見た。また、昨年度の時点では把握していなかった別の手書き資料群と推定されるものも今年度に入ってから発見された。しかし、以上の資料調査面での各進捗は2022年度終了時点においてはなお調査途中の状態にあるため、22年度内には新たな公表は控え、当研究課題の期間自体は22年度で終了するものであるが、以後も研究を継続し、次年度以降に学術的に適切に整えられたかたちでの公表・アウトプットを引き続き目指す。思想研究面では、2022年2月に開催した第3回九鬼周造記念講演会シンポジウム「J哲学の最前線」の内容の編集をおこない、活字化して『心の危機と臨床の知』24号に掲載公開することができた。二十一世紀における九鬼研究・日本哲学研究の方向性をめぐる新しい議論をアクセスしやすい形態で公開するという、今後の研究の発展に寄与する刊行となった。 現在の国内の実情としては、図書登録のない手書き資料などの扱いは、大学・機関ごとにさまざまであると考えられる。貴重なものと推定して、研究者でも容易にアクセスできない仕方で厳重に保管していても、そのことがかえって当該図書館等の担当職員の異動や当該分野の学内の教授の逝去等のほんの一つ二つの出来事によって、管理方針さらには資料の存在までもが曖昧になり、死蔵さらには廃棄を免れない事例は少なくないと推測される。知見を有する専門研究者と、文化財と言いうる貴重資料を所蔵する機関との有意義な相互協力を促進する仕組みが国内ではまだ不足していると当研究を通して認識した。情報共有や連携の適切な発展を促進する必要がある。
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Research Products
(2 results)