2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00022
|
Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
鈴木 俊洋 崇城大学, 総合教育センター, 教授 (80645242)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 専門知 / 暗黙知 / 熟練知 / 職人 / 技術哲学 / 技術倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、ロボット工学や人工知能技術の発展をふまえて、暗黙知を伴う熟練知について技術哲学の枠組みで分析と考察を行うことであり、具体的には、暗黙知や熟練知に焦点をあてた技術哲学の文献研究と併せて、工場の熟練工、伝統工芸の職人、熟練農作業者へのフィールド調査を実施し、そこで得られた結果を国内外に発信することを目指している。 3年間の研究の1年目にあたる2020年度(令和2年度)は、コロナ禍による移動や活動の制限のため、研究の進捗は計画より大幅に遅れた。文献調査と概念的考察に関しては、図書館の閉鎖等の制限はあったものの、限定的ながら研究を進めることができたが、フィールド調査に関しては、まったく実施することができなかった。 文献調査と概念的考察に関しては、H・コリンズ、中岡哲郎、フェルベークなどの熟練知に焦点をあてた技術哲学の文献調査により、熟練知の考察のための哲学的枠組みをまとめた。中岡哲郎の技術哲学に関してまとめた成果を、日本科学史学会第67回年会(2020年5月)において、シンポジウム「戦後技術論から現代へ」での提題発表「中岡哲郎:工場の熟練工の焦点をあてた技術論」として発表した(実際には、対面での学会は開催されず、発表内容が研究発表講演要旨集に掲載された)。また、人工知能に関わる技術哲学の著作の翻訳に訳者の一人として参加し、12月に邦訳書を公刊した。(クーケルバーグ著、『AIの倫理学』(丸善出版)) 熟練工や職人へのフィールド調査に関しては、上述した通り、コロナ禍による制限のため、まったく実施できず、それに伴って国内外での研究成果を発表することもできなった。今後も研究のテーマや調査対象者の特殊性から、オンラインでのインタビューなどの方策は考えておらず、社会情勢を見ながら、対面での調査実施を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度(令和2年度)は、年度初頭からコロナ禍に見舞われ、通年にわたる移動と活動の制限のため、研究の進捗は当初の計画から大幅に遅れた。 フィールド調査に関しては、山形の仏壇職人や愛知の鋳物職人を対象とする再調査、熟練農家などの新たな調査対象の開拓を計画していたが、コロナ禍における移動と活動の制限の中で、まったく実施することができなかった。対面での調査に関しては、調査対象である熟練工や職人の方々の多くが高齢であることも考慮して、配慮が必要であった。また、研究テーマの特殊性から、作業現場などに足を運んで作業認識を共有しながらの調査が必要であり、オンラインでのインタビュー調査などは実施しなかった。 文献調査や概念的考察による考察枠組みの形成に関しては、図書館の閉鎖など制限はあったものの、ある程度は進めることができた。しかし、上述したようにフィールド調査が実施できないなかで、本来、フィールド調査の成果をふまえて進められるはずであった考察枠組み形成も限定的にしか進めることはできなかった。 国内外での成果の発表については、文献調査に基づく成果を発表することしかできず、本研究課題の主要なテーマである、熟練工や職人を対象とするフィールド調査の成果を発表することはできなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度に実施できなかったフィールド調査について、社会情勢を見ながら2021年度に一年遅れての計画遂行を目指す。フィールド調査については、本研究課題の中心的なテーマが、熟練工や職人の作業現場に足を運んで、作業認識を共有しながらの調査であるため、対面での実施が必須であり、今後もオンラインなどでの遠隔的な実施は考えていない。2021年度も、社会情勢を鑑みながら、対面での調査実施を目指す。 文献調査と概念的考察による、熟練知の考察枠組みの形成について、フィールド調査の遅れに伴い遅れているが、2021年度は、当初予定とおり、考察枠組みの完成とフィールド調査の成果を踏まえた彫琢を目指す。 2020年度に熟練農家へのフィールド調査を準備するなかで、農業技術と農業の実践についての知識や、農業関連のフィールド調査の経験を持つ研究者の協力が必要であることが判明した。そのため、2021年度より、研究分担者として、農学分野の研究者で農業関連のフィールド調査の豊富な経験を持つ藤原厚作が加わった。藤原は、主に農作業者を対象とするフィールド調査の計画と実施を担当するが、その他の熟練作業者の調査にも参加する予定である。 コロナ禍による移動や活動の制限による大幅な研究の遅れのため、1年間程度の研究期間の延長も視野に入れて2年目(2021年度)の研究を進める。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍における移動と活動の制限のため、計画していたフィールド調査を実施できず、それに伴って研究全体の進行が計画よりも大幅に遅れているため、次年度使用額が生じた。2021年度は社会情勢を見ながら、フィールド調査を中心に研究を進めて行くが、場合によっては、1年程度の研究期間の延長申請を考えている。
|
Research Products
(2 results)
-
-
[Book] AIの倫理学2020
Author(s)
M. クーケルバーク、直江 清隆
Total Pages
208
Publisher
丸善出版
ISBN
9784621305881