2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00024
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
城戸 淳 東北大学, 文学研究科, 准教授 (90323948)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | カント / 観念論論駁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、本研究は、カントの『純粋理性批判』第2版の観念論論駁を歴史的かつ体系的に解釈する試みである。方法論的には、歴史的解釈と体系的解釈の2つのアプローチからなる。 本年度(2020年度)は、歴史的解釈のアプローチにおいては、近代哲学史とカント哲学発展史について研究した。近代哲学史については、デカルトのコギトの問題設定、ライプニッツのモナドロジー、ロックからヒュームにいたる経験論の帰趨、ヴォルフ学派の諸理論などを再確認した。カント哲学発展史としては、前批判期のカントの『新解明』(1755年)、さらには『純粋理性批判』第1版(1781年)の「第四誤謬推理」の解釈にとりくみ、さらにはいわゆる「ゲッティンゲン書評」と『プロレゴメナ』(1783年)における応答を再構成した。次年度はさらに同時代の批判と応答という課題に着手する予定である。 体系的解釈のアプローチでは、観念論論駁と超越論的観念論との整合性という課題にとりくんだ。観念論論駁がその存在を論証する「私の外の空間にある諸対象」とは、物自体のことか、たんなる現象のことか。物自体であれば超越論的観念論を逸脱しているし、現象であればつまり表象なので観念論の上塗りである。この問いは、同時代のピストリウスの書評から現代にいたるまで、観念論論駁の解釈の鬼門である。本研究では、「超越論的観念論のメタ的な理論一貫性」に着目して、第四誤謬推理から観念論論駁へと連なる脈略を解明し、その超越論的観念論との整合性に見通しをつけた。これを承けて次年度では、観念論論駁の時間論へと歩を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響により、教育活動に大きく時間をとられ、また研究会や学会などを開催あるいは訪問することもかなわず、研究の進捗状況は思わしくない。基礎的な研究は進めているので、今後それを成果として発表できるよう精進したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
やや遅れた進捗状況を取りもどしつつ、当初の研究計画に沿って研究を進める予定である。ただし、実地での学会等はまだ難しいので、その点では困難が予想される。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で研究会の開催、学会出張などがキャンセルになり、大幅に予算が余ってしまった。次年度以降、新規の予算と合わせて、図書費、研究会の開催の経費等に、有効活用する予定である。
|