2020 Fiscal Year Research-status Report
16・17世紀イエズス会におけるトマス・アクィナス倫理学の受容とその現代的意義
Project/Area Number |
20K00027
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
桑原 直巳 筑波大学, 人文社会系(名誉教授), 名誉教授 (20178156)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 人格主義生命倫理学 / マッキンタイア / 枢要徳 / イエズス会教育 / トミズム / トマス・アクィナス / 徳倫理学 / スグレッチャ |
Outline of Annual Research Achievements |
申請書における研究内容(1)である「16・17世紀イエズス会におけるトミズムと「キリシタン時代」の日本」に関しては、本年、先行する基盤研究(B)課題番号15H03470「カトリック系人文主義教育と日本―イエズス会を中心に―」で展開した研究成果を島村絵里子と共編で『イエズス会教育の歴史と対話』(知泉書館、総頁数560)として刊行した。これは研究内容(1)に関する現時点までの成果の集大成である。 申請書における研究内容(2) 現代社会におけるトマスおよびトミズムの意義については、さらに小項目(2-1)「 現代カトリック教会内部におけるトマスおよびトミズム受容の展開」に関して、論文「「人格主義生命倫理学」におけるトミズムと現代哲学」を発表し、現実の倫理問題に対して、E・スグレッチャ枢機卿を中心に教皇庁生命アカデミー教皇庁が示している「人格主義生命倫理学」の中に見られるトミズムの受容を明らかにした。 小項目(2-2) カトリック世界を越えたトマス倫理学の現代的意義に関しては、論文「『美徳なき時代 After Virtue』再読」を発表し、現代徳倫理学との関連でトマス倫理学の意義を示すためには、徳倫理学の復権を唱えたマッキンタイアの思想の検討に着手した。 さらに、トマス倫理学において、キリスト教固有の「対神徳」(「信仰」「希望」「愛徳」)を補完するものとして機能してきた古代異教世界から受け継いだ徳(伝統的に「枢要徳」と呼ばれる「賢慮」「正義」「節制」「勇気」)についての展開について、中世哲学会第69回大会シンポジウム連動報告「中世における「枢要徳」概念の展開──トマス・アクィナスを中心に──」を行った。この成果は21年度中に学会誌『中世思想研究』において活字化される予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績概要に示したとおり、研究成果を順調に発信することができている。ただし、コロナウィルス問題の影響で資料収集・研究発表のための出張については思うように進んでいない。
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルス問題の状況次第であるが、可能な限り精力的に資料収集・研究発表に赴きたい。 現在のところ、日本カトリック神学会での研究成果の発表を予定している。また、日本カトリック教育学会、日本倫理学会、中世哲学会などの学会に出向いて、関連する研究者と情報交換・資料収集を行いたい。 コロナウィルス問題の状況次第では国内では京都の聖トマス学院、さらに状況が許せばバチカンに資料収集に赴きたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
コロナウィルス問題のため、全ての出張が不可能となり、資料収集・研究打合せ、研究発表などのために見込んだ旅費の支出がなかったため。この未使用額は、コロナウィルス問題の状況をみつつ、令和2年度に取りやめた出張旅費に充てるとともに、研究成果発表のためにも使用する予定である。
|