2022 Fiscal Year Research-status Report
16・17世紀イエズス会におけるトマス・アクィナス倫理学の受容とその現代的意義
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20K00027
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
桑原 直巳 筑波大学, 人文社会系(名誉教授), 名誉教授 (20178156)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イエズス会霊性 / トマス・アクィナス / 秘跡論 / 徳倫理学 / トミズム / トレルチ / マッキンタイア / 岩下壮一 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の進展に伴い、研究計画調書における研究内容(2)の「現代社会におけるトマスおよびトミズムの意義について」の研究に力点を置く方向に研究活動を展開している。 小項目(2-1)「 現代カトリック教会内部におけるトマスおよびトミズム受容の展開」に関して、トマスの秘跡論の現代的意味を明らかにする研究発表および論文の発表を行っている。論文としては「トマス・アクィナスの秘跡論と現代秘跡神学―霊印論を中心に―」および「秘跡論におけるトマス・アクィナスと現代―悔悛の秘跡を中心に―」を発表した。また、日本カトリック神学会・教父研究会においてそれぞれトマスの秘跡論全体を視野に入れた形で研究成果の発表を行った。この成果は次号の「カトリック研究」に論文として掲載されることが決定している。 小項目(2-2) 「カトリック世界を越えたトマス倫理学の現代的意義」に関しては、現代哲学者の中で「トミズム的実在論」の立場をとるA・マッキンタイアの思想の検討、および近代プロテスタント神学者トレルチとトマスとの関係についての解明を進めている。マッキンタイア研究は昨年度において成果を論文化した。今年度はトレルチ研究の成果を論文「E・トレルチのキリスト教的社会思想観とカトリシズム」および「E・トレルチにおける「絶対的自然法」と「セクト類型」」として発表している。このトレルチ研究は、プロテスタント神学とトマスとの関係について扱う予定の中世哲学会大会におけるシンポジウム(2024年に開催予定)に向けての予備的な研究である。 さらに、聖心女子大学の加藤和哉氏を研究代表者とする科研と連動して、岩下壮一におけるトミズム受容の意味について解明する研究にむけて、加藤氏を中心とする研究会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績概要に示したとおり、研究成果を順調に発信することができている。ただし、コロナウィルス問題の影響で資料収集・研究発表のための出張については思うように進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルス問題の状況次第であるが、可能な限り精力的に資料収集・研究発表に赴きたい。 現在のところ、日本カトリック神学会・日本カトリック教育学会などで研究成果の発表を予定している。また、日本倫理学会、中世哲学会などの関連諸学会に出向いて、関連する研究者と情報交換・資料収集を行いたい。 コロナウィルス問題の状況次第では国内では京都の聖トマス学院、さらに状況が許せばバチカン等に資料収集に赴きたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度のみをとれば、ほぼ予定額の予算執行を行えたものと考える。ただし、過去においてコロナ禍により出張旅費の支出が無い年度が続いた結果、繰越額が大きくその分の執行は次年度以降に残る結果となった。ポストコロナの状況となれば、出張活動など順調な予算執行が見込まれる。
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