2021 Fiscal Year Research-status Report
Construction of the Correspondence Theory of Truth Based on Partial Truth
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20K00028
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
加地 大介 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (50251145)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 部分論理 / 部分的真理 / 実体主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、実体的対象を基礎的存在者として認定する「実体主義的形而上学」の観点から要請される「部分論理(partial logic)」はどのような基準のもとでどのような選択を行うべきであるかを検討するという課題が組み込まれている。「部分論理」とは、一言で言えば、いわゆる「真理値空隙」を許容する論理学である。通常、真理値としては「真」と「偽」が採用されるので、それは、真偽いずれの真理値をも持たない命題を許容する論理学だとも言える。その意味では、「二値原理」を否定する論理学だとも言えなくもないが、その場合に否定されている二値原理は「すべての命題が真偽いずれかの真理値を一つだけ持つ」という最も強い(狭い)意味での二値原理であり、「真理値は真偽の二つしかなく、すべての命題はそのうちの高々一つしか持たない」という弱い(広い)意味での二値性は保持されている。 令和3年度は、論文「実体主義の論理としての部分論理(1)」において、上述の課題に踏み込む前の基礎的考察を行った。具体的には、N.C.A.ダ・コスタとS.フレンチがパースやジェイムズのプラグマティズム的真理論を参照しつつ『科学と部分的真理』(2003)の中で展開した議論を手がかりとしながら、部分論理の前提となる「部分的真理」の形而上学的含意について考究した。その結果として、彼らの議論には実体主義的形而上学の観点からも評価できる側面をいくつか見出せるが、彼らの真理論がもっぱら認識論的観点に基づいているために、真理の部分性や時間性を消極的な形でしか捉えられていないという問題点を指摘した。そのうえで、特にジェイムズの真理論にはより積極的な動機があったことを確認するとともに、存在論的観点に基づけば、部分的真理には実在そのものの動的性格や形而上学的な不確定性を捉える等の積極的意義を見出すことができる、ということを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の申請書において、次のような「実体主義的存在論における真理の部分性」に関する研究を目的のひとつとして掲げている:
実体的対象を基礎的存在者として認定する実体主義的存在論においては、少なくとも次の三通りの場合に真理の部分性が発生する:①当該の可能世界または時点において当該の実体的対象が不在の場合、②当該の実体的対象の当該の力能が正負いずれの閾値にも達していない場合、③当該の実体的対象に関する未来事象が成否いずれにも確定していない場合。これらそれぞれの場合における真理の部分性には固有の特徴があるので、それらを一括して処理できる一般的な部分論理の体系を構成できるのか、それとも、それぞれの特徴に合わせた形で個別的な部分論理の体系を構成すべきなのか、検討する。
部分的真理に関する今年度の基礎的研究によって、真理の対応説的観点からの部分的真理一般の積極的意義が見出された。その結果、上記の検討課題に対して、どちらかと言えば上記の三つの場合を一括して処理できるような一般的部分論理の体系を構成する方が有望であろうという見通しが得られた。この理由によって、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、本研究の研究対象の一つである「真理の部分性」に関して、「実体主義的存在論における真理の部分性」の研究を主に推進したので、令和4年度は、もうひとつの「部分論理における否定と妥当性」の研究に主眼を移すことにより、実体的対象を基礎的存在者として認定する「実体主義的形而上学」の観点から要請される「部分論理」はどのような基準のもとでどのような選択を行うべきであるかを検討するという具体的課題を果たしたい。 それとともに、本研究のさらなる研究対象である「真理の対応性」に関する研究を遂行する。これに関しては、「偽値付与者の存在論」と「真理値受容者の存在論」という二つの具体的研究課題を掲げているが、まずは後者から取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、学会発表のために予定していた出張がなくなったため、出張旅費として予定していた額を次年度に繰り越すこととなった。次年度では出張旅費として使用したい。
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Research Products
(3 results)