2023 Fiscal Year Annual Research Report
共通感覚の公共的機能の再解釈を基盤とした「テレパシー倫理学」の構築
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20K00030
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
宮崎 裕助 専修大学, 文学部, 教授 (40509444)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | テレパシー / 想像力 / フィクション / 郵便的 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終年度となる2023年度の研究実績は、主に以下の二つの視点から「テレパシー倫理」にとって重要な諸論点を提示し、今後の展開につながる議論を練り上げたことにある。
第一に、スピノザのデカルト批判のうちに、想像力の言語という論点があることを指摘したうえで、いかにそれが哲学にとって不可避であるかということ、そこにこそ、哲学の方法論が必然的に抱え込まざるをえない倫理的決定が露呈するということを論じた。スピノザの批判は、デカルトには、哲学が制御しえない言語にたいする批判的な洞察が欠如している点を解明するものであった。デカルトの方法は、スピノザによれば、フィクションへの無反省な依存であり、想像力の言語への妥協にすぎない。本研究はこのことをデリダの講義録を参照することよって、方法の大原則が、当の方法から始めることはできないということ、それでも方法から始めようとすれば、想像力によるフィクションに訴えなければならなくなるということを示した。つまり、そのようなフィクションへの依存において働く想像力の言語に、本研究が追究しようとしているテレパシー倫理の要素を突き止めることができた(スピノザ協会招待講演「誰がスピノザを恐れているのか──超越論哲学(デリダ)のスピノザ忌避について」)。
第二に、デリダがハイデガーとフロイトの読解を通じてとりあげた「郵便」の概念のもとに「テレパシー倫理」の要点を練り上げた。日本語圏ではこの問題に最初に着手したのは、東浩紀『存在論的、郵便的』である。本研究課題では、東の近著に基づき、この概念が新たに解釈されて「郵便的不安」として提示されている点を重視し、そこに現代の管理社会にみられる生権力への抵抗を「郵便的訂正可能性」として析出した。これは、本研究課題の「テレパシー倫理」の今後の展開の萌芽に位置づけられるべきものである。(論文「郵便的訂正可能性について」)
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Research Products
(9 results)