2020 Fiscal Year Research-status Report
A feminist study of Rawls's idea of property-owning democracy
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20K00044
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
神島 裕子 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (60449329)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 財産所有の民主制 |
Outline of Annual Research Achievements |
こんにち、福祉国家の哲学的基礎として折に触れて参照されるロールズ正義論は、その抽象的議論や具体的政策案を、特定の経済社会システムを前提に提示している。ロールズ正義論の影響下にあった政治哲学も、同様の経済社会システムを前提とするものであったと言えるだろう。そのためロールズ正義論の枠組み(国家依存的でリベラルな平等主義)からこぼれ落ちる問題もまた、等閑視される傾向にあった。そのような問題の一つがジェンダー不正義である。本研究は、ジョン・ロールズの「財産所有の民主制」(property-owning democracy)という理念をフェミニスト的視点で考察・展開し、より真なる意味でのすべての人の「平等な自由」の実現を目指す思想と実践を提案することとしており、初年度は当初の予定通り、ロールズの「財産所有の民主制」構想の元となっているジェームズ・ミードの著作や、「財産所有の民主制」に関する研究書を精読することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度には、ロールズが『正義論』執筆時にどのような経済社会観を有していたのかを明らかにするために、ハーバード大学のアーカイブ(Harvard University Archives, John Rawls Papers)に赴き、ハーバード大学の同僚で『正義論』の執筆時に影響力のあった経済学者の思想について、ロールズがコメントを残していないかを調査未公刊の資料を収集する予定であったが、コロナウィルス感染症拡大のために行けなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、初年度に得た知見に照らして、フェミニスト的視点から「財産所有の民主制」を批判的に検討する予定である。特に、ミランダ・フリッカーの認識的不正義論に基づくフェミニスト的視点を加えて「財産所有の民主制」を考察・展開することを課題とする。また、ロールズの「財産所有の民主制」に関する資料を揃えるため、初年度に行えなかった分も含めて、ハーバード大学のアーカイブにて資料収集を行う。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していたアメリカ出張(ハーバード大学のロールズ・アーカイブにての資料収集)がコロナウィルス感染症拡大のため中止になったため
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Research Products
(1 results)