2020 Fiscal Year Research-status Report
明清期浙江寧紹地域における学知の転換-劉宗周・邵廷采・全祖望・章学誠-
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20K00050
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
早坂 俊廣 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (10259963)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 明清期寧紹地域 / 劉宗周 / 邵廷采 / 黄宗羲 / 全祖望 / 章学誠 |
Outline of Annual Research Achievements |
邵廷采の年譜資料を読み込み、その生涯と交友関係について再確認を行った。その過程で、彼の「学校論」が邵廷采思想を理解するうえで重要なものであり、明代の講学活動を批判する内容を含んでいることが分かったため、他の科研で行った共同研究(基盤B「陽明門下の講学活動と「会語」資料に関する総合的研究」等)や個人研究(基盤C「清朝中期以降の寧波における文化保存の精神史」「證人社と證人書院の間―明清期寧紹地区に見る思想史の転変―」)との接点をより強く、具体的に認識することが出来た。また、その流れで、黄宗羲『明夷待訪録』の「学校」論との比較分析を開始した。 さらに、黄宗羲の「冬青樹引」で扱われている、南宋皇帝の陵墓が元兵によって盗掘された事件とそれに密かな抵抗を示した「義民」の物語について過去に研究会等で発表した旧稿を整理し直し、その物語の継承に邵廷采と全祖望も関わっていることを再確認した。この「冬青樹」言説については、これまで、黄宗羲の弟子である万斯同に関する文章(「思想の記録/記録の思想-寧波の名族・万氏について」『文化都市 寧波』東京大学出版会pp.162-177)のなかでごく一部しか取り扱っていないので、黄宗羲・邵廷采・全祖望の議論を見通した総括的な論攷に着手することにした。 以上のように、学術論文という形で研究実績を公表することは出来なかったが、今後の研究の軸になる検討・分析は遂行することが出来た。また、中国の研究者とZoomを利用して情報交換を行うことが出来たので、この方策を今後も積極的に取り入れていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響を受け、中国での現地調査や学会参加、国内での文献調査等が行えなかった。その分の予算を、地方誌全文検索ソフトの購入および書籍購入に充てたため、研究の進展は見られたが、想定していた進捗状況には到達できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も海外出張の実現は見込めないため、文献資料の読解・分析に重きを置いて、研究を進展させる。また、地方誌全文検索ソフトを積極的に活用して、分析を促進する。さらに、可能な限り海外・国内の研究者とオンラインで連絡を取り、研究情報の収集に努めるとともに、状況を見ながら国内出張も検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度において、新型コロナウィルス感染症の蔓延により、国内外の出張(現地調査や学会参加、文献調査等)を行うことが一切出来なかった。そのため、旅費・謝金としての支出が全く無く、もっぱら物品費のみの支出となった。また、「江西省」「安徽省」の地方誌検索ソフトを購入したが、どの省のものも高価であるため、旅費・謝金で浮いた分の予算を廻しても必要なもの全てを購入することは出来なかった。そのため、次年度使用額と翌年度分請求額を合算し、当該年度に購入できなかった「江蘇省」の地方誌検索ソフトを優先的に購入したい。さらに、最新の出版状況を踏まえつつ、必要な文献資料を購入していく。新型コロナウィルス感染症の収束次第ではあるが、国内の出張(学会・研究会への参加)も検討する。
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