2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00051
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堂山 英次郎 大阪大学, 人文学研究科, 教授 (40346052)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | インドラ / リグヴェーダ / ブラーフマナ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、インドラについての最古で最大の情報源である『リグヴェーダ』(RV)から、インドラの神話や関係する記述を集め、読解と分析を行った。特に、研究代表者が数年来携わるRVの新ドイツ語訳プロジェクトにおいてRV第6巻の大部分を翻訳した際に、いくつかのインドラ讃歌を詳細に分析する機会を得た。これらの分析に基づいて、各種神話をその構成素によって分類し、後のサンヒター(散文)やブラーフマナ文献の対応する神話に紐付けする作業を行った。 RVより後の資料としては、ブラーフマナ文献におけるインドラ神話の精読を行った。特に、ギリシャ神話のゼウスにも比べられるべきインドラの多様な変身譚に注目し、ウパグ・サウシュラヴァサの伝説における魚への変身譚と、十王戦争の伝説に見る老人への変身譚に関して、全ての関連テキストを読解・分析した。 一方、前年度までと同様に、語源学者ヤースカ著『ニルクタ』に見る古代インド人のインドラ観についても、引き続き調査を続けた。これについては、前々年度から延期されていた国際サンスクリット学会(於 オーストラリア、キャンベラ)が、コロナウィルス感染症の影響により再び延期となったため、発表の場をさらに次年度に持ち越した。 調査・考察の質を高め、再度の発表を予定している。 サンヒターからブラーフマナに散見される人類創生神話の一つに、人類の始祖と死者の王が誕生する話があり、これがインドラの誕生譚にもなっているが、それに関係するイラン側の神話・伝説(直接インドラの対応人物は出てこない)についても調査し、論文として発表した。 叙事詩やプラーナのインドラ神話、またイラン側の関係資料(ゾロアスター教聖典『アヴェスタ』)については特に研究を進めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き、コロナウィルス感染症の拡大に伴い、本務校での教育・管理運営の仕事が大幅に増えたことと、情報収集や学会・研究会のための移動の制限、また 学会・研究会自体の延期等により、当初予定していた研究規模を縮小せざるをえなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、RVを始めとするサンヒター文献(韻文+散文)とブラーフマナ文献からインドラの神話や記述をなるべく多く採取・読解し、その内容を整理・分類することに注力する。これまで収集してきた神話は、内容的に大きなまとまりを持つものだけでなく断片的な記述も多く存在するが、資料が増えるにつれてそれらの系統化が可能になりつつある。これを受けて、一つの神話あるいは個々のモチーフを、古い文献からプラーナにいたる全文献にわたって系統付ける作業を少しずつ始めていきたい。そのうち一定の解釈とまとまった議論が可能なものについては、学会で発表するか、論文を執筆する予定である。 上記の研究過程においては、テキスト自体を正確に読み解くための文献学(言語学)的視点と神話学的視点が必要なのは大前提であるが、それらに加えて、深層心理学的の観点からどのように分析可能であるのかについても、二次文献の収集も兼ねて調査したい。 一方、インドラ神話自体を記述する文献とは別に、後の祭式手順書であるシュラウタスートラにも注目する。体系化したシュラウタ祭式において、インドラがどの祭式で、どのように、何を期待されて称えられているか等を分析することで、古代インド人がインドラという神にどのような役割を投影していたのかを浮かび上がらせることが可能になると考えられるからである。 また、一昨年度に行っていたゾロアスター教聖典『アヴェスタ』の古層部分(ガーサー)の読解を再開し、インド・イランにおけるデーヴァ(ダエーワ)とアスラ(アフラ)の関係性についての分析を進める。 以前から準備を進めている、『ニルクタ』に見るインドラの記述と当時のインドラ観については、今後得られる新たな知見も含めて議論を再構築し、その成果を2023年1月に再延期された国際サンスクリット学会において発表する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染症拡大の影響により、参加予定であった国内学会が中止および遠隔開催になったことと、参加・発表予定であった国際学会が延期になったことで、旅費・宿泊費、英文校閲費等が不要になった。延期となった国際学会は次年度に行われるため、繰り越した助成金はそのための旅費・宿泊費、英文校閲費等に充てる予定である。また一部海外の図書類も、流通が遅れ年度内に間に合わない恐れから発注を控えたものがある。これらもまとめて次年度に発注する予定である。
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Research Products
(1 results)