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2020 Fiscal Year Research-status Report

宋学形成における象数学の位置―南宋易学を中心に―

Research Project

Project/Area Number 20K00052
Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

辛 賢  大阪大学, 文学研究科, 講師 (70379220)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywords図書 / 河図洛書 / 劉牧 / 易数鉤隠図 / 象数 / 言不尽意 / 易学 / 宋学
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、宋学の形成に与えた象数易学の影響について考察することを目的とする。本年度は、北宋以降に盛行した図書学、とりわけ河図洛書の説を代表する劉牧の『易数鉤隠図』を取りあげ、その展開と思想史的意味について検討を行った。
三国・六朝時代には、六十四卦の象数を重んずる漢易的技法を止揚し、経文の真意をめぐって盛んに議論が行われた。系辞伝に「書は言を尽くさず、言は意を尽くさず(中略)聖人象を立てて以て意を尽くす」とあるように、「象」は、『易』に特化したテクニカルタームに止まらず、言語を超える直観的認識対象として考えられるようになったのである。宋代に浮上した、形而上の「道」と形而下の「器」をめぐる道器論は、「道」のみを重視して形器を廃棄すれば、根源的存在者「道」を明らかにすることはできないという認識が広がり、図像による直観的認識によって言語の限定性を超え、経文の真意に近づける可能性に注目するようになったのである。北宋劉牧の『易数鉤隠図』は、以上のような思想史的流れのなかで著された著述であった。
そこで本年度は、漢代から明・清に至るまで河図洛書に関する諸説を精査し、劉牧の『易数鉤隠図』の思想史的意味について考察した。『易数鉤隠図』は、系辞伝における「天地の数」と「大衍の数」に対する解明を目指すものであったが、清の毛奇齢が『河図洛書原舛編』において指摘しているように、それは五行と大衍の数と八卦とを結合した後漢鄭玄(『礼記』月令鄭注)以来の伝統的な説を引き継ぐものであることが明らかであり、形而上的「数」と「象」を図像化することによって、形而上的「道」への直観的認識を図るものであったと言える。以上の検討結果については、今後学会発表を通じて公開していく予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究の助成期間の前半では、図書学派と数学派の著述を取りあげ、その思想的特徴を考察し、後半では朱子学における象数学の影響について考察する予定である。
助成期間の初年度に当たる本年度では、象数学派の一派である図書学派の著述を取りあげ、河図洛書説の変遷と意味について考察しており、現在、順調に研究を進めている。
後漢から三国・六朝時代にかけて巻き起こった、言語と意味をめぐる諸議論は、「言象不尽意論」「忘言忘象得意論」「言尽意論」とで分かれ、言語の限定性による認識の限界を指摘しつつ、「象」の有用性を認める方向を示すものであった。この流れは、宋代以降、印刷術の発展につれて経学研究に多くの図像が用いられた思想的背景となり、南宋の楊甲『六経図』をはじめとして、劉牧の『易数鉤隠図』に見られる河図洛書の説が登場したのである。本年度は、『易数鉤隠図』の内容を検討し、劉牧の河図洛書説の由来とその思想的特徴を探った。朱震の『漢上易伝』に示しているように、劉牧の河図洛書説は五代末の道士陳摶の系譜を引くものとして広く知られているが、じっさいに『易数鉤隠図』の内容を検討すると、大衍の数と五行と八卦を融合し体系化した後漢鄭玄の説(『礼記』月令注)を受け継いでおり、河図洛書という名で図像化したものであることが明らかである。この点、清の毛奇齢が『河図洛書原舛編』において指摘しており、劉牧の河図洛書説は鄭玄の影響を大きく受けていることが明らかになったと言える。以上の検討結果については、今後、学会発表を通じて公開していく予定である。

Strategy for Future Research Activity

宋代では理学派・気学派・数学派・象学派などの多様な流派が生み出されており、いずれも「易」をもって自己の哲学体系を築いているなど、易学との関連が極めて深い。そこで本研究は、易の「象」「数」が、宋代においてどのような哲学的意味をもって理解されていたのか、象数の哲学的側面に焦点を当て、その思想史的意味を考察するものである。
本年度に行った北宋の劉牧『易数鉤隠図』の検討結果をもとに、雷思斉『易図通変』、宋濂『河図洛書説』、帰有光『易図論』、呉澄『易纂言』、張理『易象図説内篇』など、南宋から元・明代における図書学派の諸資料を取りあげ、劉牧以来の図書学の展開、とりわけ河図洛書説の変遷と思想史的特徴について、さらに検討を重ねていく予定である。
また、南宋の数学派として知られる蔡元定・蔡沈の著述を取りあげ、その数理哲学について考察を行う予定である。まずは、朱子『易学啓蒙』所収の蔡元定の易説を検討し、その思想的特徴を明らかにする。蔡沈の著述として『洪範皇極内篇』が有名であるが、そこには父蔡元定から受け継いだ「河偶洛奇説」と呼ばれる独特な理論が述べられている。従来、蔡元定・蔡沈の河洛学は九宮図に淵源すると指摘されてきたが、卑見によれば、前漢揚雄の『太玄』の数理に密接な関わりをもっていると推察される。そこで、蔡元定・蔡沈の河洛学を取りあげ、南宋の数学派が捉えた「数」の哲学的意味について考察する予定である。

Causes of Carryover

新型コロナの影響により、学会がオンライン形式による開催になるなどして、当初予定していた旅費15万円が未使用になったためである。使用計画としてはコロナーの状況にあわせて国内外の出張旅費に充てるか、または資料の購入に充てる予定である。

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Published: 2021-12-27  

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