2020 Fiscal Year Research-status Report
「嶺南心学」研究の基盤構築――明代心学史像の再検討のために――
Project/Area Number |
20K00055
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
鶴成 久章 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20294845)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嶺南心学 / 明代心学 / 湛若水 / 陳献章 / 陽明後学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまでの中国思想史研究における明代心学史の枠組みを一旦解体し、当時の資料から嶺南地域(広東、広西、雲南東部、福建西南部)の心学者群を博捜した上で、「嶺南心学」を総合的に考察するための基盤を構築し、「嶺南心学」の思想家の活動の実態と思想の特色の解明を通じて、明代心学を代表する思想である「陽明学」の位置づけを相対化して、明代心学史像を新たな視点から再検討しようとするものである。今年度は、まずは、当初の計画通りに、『明儒学案』の白沙学派(陳献章の学統)、甘泉学派(湛若水の学統)から、嶺南地域出身の学者を抽出し、その著作から思想的な繋がりのある嶺南の学者をリストアップする作業を行った。また、併せて『〔万暦〕新会県志』巻六「白沙弟子」、及び阮榕齢編『白沙門人考』の内容分析も行った。各思想家の詳細な伝記を調べるに当たっては、基本的に嶺南地域の地方志の電子データを使用したが、国内外の漢籍所蔵機関に調査に行くことができなかったため、紙媒体との照合作業はほとんどできていない。一方、『泉翁大全集』全八十五巻、『甘泉先生続編大全』全三十三巻の内容を詳しく調査することで、湛若水の別集に登場する門人の整理をかなり進めることができた。さらに、この調査を進めていく過程で、湛若水が、嘉靖三年(1524)に南京国子監祭酒となり、その後、南京の吏部、礼部、兵部の尚書を歴任して同十九年(1540)に致仕するまでの間に弟子入りした門人の中には、王守仁(陽明)、あるいは陽明後学の思想家たちとの交流関係も深く、一概に甘泉学派の思想家とはみなし難い人物が少なくないことを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた国内外における文献資料調査(東京、広東、台北)が全く実施できなかったため、代替手段を講じて研究を進めたが、それだけではどうしても限界があったため。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に、研究計画通りに進める予定であるが、昨年度と同様、国内外における文献資料調査、及び現地調査を実施できる可能性が、依然不透明なため、状況に応じて、研究の手法を変更する必要が生じてくることも想定している。
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Causes of Carryover |
予定していた国内外の文献資料調査が実施できず、資料複写依頼等の代替手段を講じて研究を進めたことにより、当初の計画通りに予算を執行することができなかった。 次年度も、前半は、今年度と同様の状況が続くことが予想されるが、後半以降に、これまでの変則的な状況を取り戻すような方策を検討し、「次年度使用額」と翌年度の助成金とを合わせて有効に使用するようにしたい。
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