2023 Fiscal Year Annual Research Report
「嶺南心学」研究の基盤構築――明代心学史像の再検討のために――
Project/Area Number |
20K00055
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
鶴成 久章 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20294845)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嶺南心学 / 陽明心学 / 陳献章 / 湛若水 / 白沙学 / 甘泉学 / 陽明学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、まず昨年度3月末の投稿後に取り下げた論文(「湛若水と陽明後学―陽明学との「大同」に活路を求めた甘泉学―」)を全面的に修訂する作業を行った。その過程で、陽明後学の代表的な思想家の著作の中から関連資料を念入りに探し出し、湛若水との思想的交流関係を詳細に考察した。その結果、王守仁逝去後の晩年の湛若水の思想活動では、師説(白沙学)の宣伝活動に従事する一方で、自説(随処体認天理)と王守仁の学説(致良知)は同じ(大同)だという主張を繰り返し、自身の門弟と王守仁の後学たちに対して、王・湛の学の相違をめぐる論争は止めて、両学の「大同」を「黙識」するように説き続けていたことを明らかにした。紙数の関係で、上記論文の中に発表することができなかった問題も多く、それらを改めて整理して「嶺南心学」の実態解明をさらに深めることに繋がる論文を作成中である。その中では、明代心学思想の先駆者とされる陳献章の思想、及び彼の高弟である湛若水を中心とする嶺南の心学者たちの明代思想史上の位置付けについて、黄宗羲の『明儒学案』が言及していない事実を中心に取り上げて検証することを構想している。研究期間終了までに完成させ投稿することができなかったのは遺憾であるが、今年度(2024年度)内に学術論文のかたちで発表したいと考えている。 最後に、四年間の研究計画期間中、予定していた「嶺南心学」研究の拠点である広東省・広西省・海南省をはじめ中国内の現地調査、並びに国外の機関における文献資料調査が全く実施できず、当初の研究計画に大幅な変更を加えることを余儀なくされた。しかしながら、研究計画期間の後半には、国内の研究機関・図書館の調査を重点的に実施する等の代替手段を講じることにより、最終的な研究成果としては、「嶺南心学」研究において新たな知見を少なからず提示することができたと考えている。
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