2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00064
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
橘堂 晃一 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00598295)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 仏教 / ウイグル語 / 金光明最勝王経 / 唯識 / 写本 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイグル語訳『金光明最勝王経』の写本の大部分は、ベルリンとサンクトペテルブルグに保管される。このうち後者の写本のテキストはW.Radloff氏によって、すでに1930年に発表されており、前者についてもS.Ch.Raschmann氏によってカタログ化され、複数のトルコ人研究者によってテキストの校訂がなされている。とはいえ、修正すべき部分が少なからず認められるため、写本を実際に閲覧することは本課題にとって必要不可欠の作業であった。 このような見通しをもって、今年度は、サンクトペテルブルグの東方文献研究所を訪問し写本を実見する予定であったが、コロナ禍の影響により断念せざるをえなかった。その代案としてサンクトペテルグ東方文献研究所所蔵ウイグル語写本マイクロフィルムを閲覧することによってテキストの校訂作業を進めていくことも考えたが、目まぐるしく変化する感染状況により、マイクロフィルムを所蔵する(財)東洋文庫を訪問する機会も逸してしまった。 このことが研究の進捗に及ぼす影響は少なくないが、同時並行して進めていたテキストの入力と日本語訳と語彙索引の作成に注力することにした。本課題が研究対象とするのは第四巻「最浄地陀羅尼品」であるが、すでにHacer Tokyurek氏が校訂本を出版しており、これを底本として作業を進め、テキストの入力は終了し、その日本語訳も三分の二を終えた。またこれと並行して漢訳『金光明最勝王経』にはない、ウイグル仏僧によって独自に挿入された注釈部分の典拠となった論書の検索も行った。その結果、注釈部分の多くが大乗基の学系に属する唯識論書を参考にしていることが明らかとなった。このことは、本課題の今後の研究の方向性を定める大きな成果であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の作業の中心となるのは、ベルリンとサンクトペテルブルグに保管されるウイグル語写本を閲覧し、信頼できるテキストデータを構築することであったが、コロナ禍の影響により、国外の写本資料にアクセスすることはできなくなった。これにより本課題の当初の計画に遅れが生じていることは認めざるをえないが、その影響は研究計画を全面的に見直さねばならないほどのものではない。 その一方で、当初より予定していたテキストの入力、翻訳作業、注釈部分の検討は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も海外に出向いて写本を閲覧できるかどうかは不透明である。したがって、すでに入力し終えたテキストに基づいて、日本語訳と語彙索引を完成させることを最優先の課題としたい。また、注釈部分の内容を検討するための時間も十分に確保できることが予想されるので、中国のみならず、日本の唯識文献との比較も試みたいと考えている。
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