2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00064
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
橘堂 晃一 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00598295)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 古代ウイグル語 / 唯識文献 / 勝光闍梨都統 / 金光明最勝王経 / トゥルファン盆地 / 玄奘 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイグル語訳『金光明最勝王経』の写本の大部分は、ベルリンとサンクトペテルブルグに保管されている。このうち後者の写本のテキストはW.Radloff氏によって、すでに1930年に発表されており、前者についてもS.Ch.Raschmann氏によってカタログ化され、複数のトルコ人研究者によってテキストの校訂がなされている。とはいえ、修正すべき部分が少なからず認められるため、写本を実際に閲覧することは本課題にとって必要不可欠の作業であった。 今年度も、サンクトペテルブルグの東方文献研究所を訪問し写本を実見する予定であったが、コロナ禍の影響、およびロシアによるウクライナ侵攻により断念せざるをえなかった。そのような研究上の制限があるなかで、2021年度でマイクロフィルムの焼き付け写真に基づき、ウイグル文『金光明最勝王経』のテキスト入力と翻訳を継続し完了している。 2022年度は、写本に基づくテキストの校訂作業を保留し、語註と語彙索引の作成に注力した。翻訳者である勝光闍梨都統(シンコ・シェリ・トゥトゥング)は、『金光明最勝王経』のほか、『大唐大慈恩寺三蔵法師伝』、『千眼千臂観世音菩薩陀羅尼神呪経』を翻訳している。そこで、勝光闍梨都統一の翻訳に使用されている仏教術語の用例を比較する作業を行った。とくに『金光明最勝王経』に挿入される唯識文献と関係の深いLehrtextと呼ばれる文献と『大唐大慈恩寺三蔵法師伝』との比較することにより、共通する表現を確認することができた。その成果は「古テュルク語訳「慈恩伝」研究の現在地と新視座」として論文化し、2024年に発表の予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の作業の中心となるのは、ベルリンとサンクトペテルブルグに保管されるウイグル語写本を閲覧し、信頼できるテキストデータを構築することであったが、コロナ禍の影響により、国外の写本資料にアクセスすることはできなくなった。これにより本課題の当初の計画に遅れが生じている。その一方で、当初より予定していたテキストの入力、翻訳作業、注釈部分の検討は順調に進捗しているものの、当初の遅れを取り戻すことはできなかった。そこで研究期間を一年延長することにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
すでに入力し終えたテキストに基づいて、日本語訳は完成した。しかし写本を確認することが必要であることに変わりなく、このままでは不完全なままである。しかしながら、今年度も海外に出向いて写本を閲覧できるかどうかは不透明である。 マイクロフィルム写真によって、テキストと訳注、語彙索引を完成させ、報告書としてまとめたい。
|
Causes of Carryover |
ロシアのウクライナ侵攻により予定していたサンクトペテルブルグへの渡航を断念したため研究進捗に遅れが生じた。これにより予算を消化することが困難となった。研究期間を一年間延長し、当初の計画を着実に実施するために使用したい。
|