2020 Fiscal Year Research-status Report
Religiousness in academic studies: Cases in practical ethics and thanatology
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20K00068
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池澤 優 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90250993)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 死生観 / 宗教観 / 死生学 / 生命倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は新型コロナウイルス感染症のために資料収集のための出張が全くできなかった。このため出張のために予定していた資金を書籍や雑誌、備品の購入に振り向けた。購入した書籍の分野は宗教学、死生学、生命倫理、環境倫理、医学など多方面にわたる。特に力を入れたのは、研究代表者が専門とする中国の死生観に関する文献を収集することであった。そして、収集した文献の著者たちが暗黙裏に前提にしている宗教観や死生に関する価値観の分析を行った。 生命倫理関係の文献の分析は初期の生命倫理学者、ポール・ラムゼイやハンス・ヨナスのものが中心になった。ラムゼイは神学者でもあり、研究動機は明白に宗教的であって、例えば序文においては医師と患者の関係を神と人間の契約(covenant)になぞらえる一方、主文においては宗教的な概念を用いず、宗教的な感覚を世俗的な語彙で表現しようとする意図が明らかに感じられる。ヨナスの場合は“人間が手を触れてはならない(神の)領域”という感覚を哲学的な論理のみを用いて是認しようとしている。共に非宗教的な言語を用いることで、宗教的な感覚を学問の中に導入しようとしていると言える。 死生学関係については、ロバート・リフトンの著作を対象とし、それにかかわる論文を刊行した。リフトンの場合、彼が「象徴的不死」という語彙で表す生の意味づけの類型の一つが「神学的」であるので、彼の心理学には宗教的なるものが組み込まれていると言えるが、それに対する彼の評価は実は高くない。彼が重視したのは、人間と人間、人間と自然、人間と宇宙の間のつながりの感覚である。 一方、中国の死生観に関する研究の場合、著者の宗教観(宗教といかなるものと見なすか、肯定的/否定的に捉えるか)がバイアスとして議論の中に組み込まれていると判断できるが、その点に関する分析は時間が充分ではなかったので、平成3年度に更に発展させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症のために資料収集のための出張ができなかったことは痛手であったが、研究のための資料の収集とその分析は進展したので、おおむね順調に進展していると言って良いものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
このまま資料の収集を続けたい。出張ができないため、特に海外の一次資料をどのように収集するかが課題であり、二次資料(海外で出版された書籍など)の収集に転換することも考えている。
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Causes of Carryover |
注文した書籍の中に在庫がないものがあり、納品が令和三年四月以降になることになったため。
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Research Products
(1 results)