2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00070
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
清水 邦彦 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50313630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
由谷 裕哉 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (00192807)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 瑩山 / 密教 / 中国禅宗 / 境内社 |
Outline of Annual Research Achievements |
清水邦彦は、2020年度からの課題であった、『瑩山清規』の分析が一旦終わり、その成果を日本宗教学会年次大会で口頭発表、『金沢大学歴史言語文化学系論集』14号(2022年3月)に活字化した。『瑩山清規』に散見する「楞厳呪」(もしくはこれに類似する要素)は現世利益を目的としており、密教的と云えば密教的だが、中国禅宗寺院に見られる要素である。瑩山の修学経験を踏まえると、「楞厳呪」は日本密教から取り入れた要素ではなく、中国禅宗から取り入れた要素と判断される。清水邦彦は、上記以外に、日本宗教学会の依頼により、「書評と紹介 朴炳道著『近世日本の災害と宗教 : 呪術・終末・慰霊・象徴』」(『宗教研究』95巻3号、2021年12月)を執筆した。同書は、日本の死者供養を概観した名著だが、「無縁」という言葉の解釈にやや難があり、その点を指摘した。本研究に密接に関わるものではないが、曹洞宗の死者供養を考察する一起点となる。なお、曹洞宗の死者供養は密教からの影響を受けて成立したとされている。 由谷裕哉は、「井上友一神社局長の明治四二年大洗訪問」(『大洗の本』2号、2021年5月)を執筆した。井上友一は内務官僚で神社合祀を行った人である。由谷の、神社合祀に関する研究の一環である。この論文自体は本研究と直接関わるものではない。が、江戸時代以前、曹洞宗の寺院には境内社があるのが一般的であった。これが明治の廃仏毀釈によって分離され、その後、分離された境内社の中には神社合祀に遭ったものもある。以上の経緯により、曹洞宗寺院の境内社の歴史は概して分かりにくい。由谷の、神社合祀の研究成果は、本研究に大きな利点をもたらす。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度、清水邦彦は2020年度からの課題である、『瑩山清規』に関し口頭発表を行い、これを活字化できた。この点は大きな進展と云える。 2021年度、清水邦彦・由谷裕哉とも、コロナ禍の状況を見つつではあったが、2020年度は見送った遠距離の調査を行うことができた。研究成果の発表は2022年度以降になるが、調査ができたことは大きな進展である。既に由谷裕哉は調査成果を2022年4月に口頭発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、これまでの現地調査の成果及び史料分析を生かした研究成果を発表する予定である。清水邦彦は『普済寺清規』(曹洞宗全書所収、1527年成立)を読解し、平行して普済寺(静岡県浜松市)・妙厳寺(別名:豊川稲荷、普済寺の末寺、愛知県豊川市)の調査を行う。通説では『普済寺清規』は密教的要素があるとされているが、果たして通説は妥当なのか、現在ではどうなのか、といった事柄を調査・研究する。まずは日本宗教学会年次大会で口頭発表を行う予定である。 由谷裕哉は、引き続き神社合祀研究の視点から曹洞宗寺院の境内社の歴史的研究法を模索する。合わせて修験道研究の視点から曹洞宗と修験道との関係を考察する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍を鑑み、予定していた遠距離の調査を次年度以降に延期したため。
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Research Products
(4 results)