2020 Fiscal Year Research-status Report
近代英領マラヤにおける中国民衆宗教の宗教文献の流通に関する総合的研究
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20K00075
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
小武海 櫻子 学習院大学, 文学部, 助教 (00748874)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 近代中国 / 英領マラヤ / 宗教 / 情報 / 交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
(概要) 本研究の目的は、英国海峡植民地にみられる中国民衆宗教を対象に、19世紀から20世紀にかけて伝わった中国民衆宗教運動の南洋における歴史的展開を明らかにすることである。 研究の作業としては、(1)シンガポール・マレーシアに今も残る同善社・帰根門・普渡門といった青蓮教系教派の宗教施設を訪れ、英領マラヤ時期の中国民間宗教文献を収集・整理するとともに、(2)華人移民の宗教理解や宗教文献の越境的伝播の在り方を分析することである。それによって、中国民衆宗教からみえる近代中国と南洋を繋ぐ華人移民の歴史を跡づけようとした。 (本研究の成果) しかしながら、本年度は、昨年1月より始まる新型コロナ感染の拡大によって、調査を全く行うことができず、本研究の実施計画のほとんどを実現することが不可能となった。本研究助成金とともに2020年度より得た安倍能成記念教育基金学術研究助成金に基づいて、次年度において引き続き作業を進められるよう、日本で行いうる文献の収集、資料整理を行うことにした。 研究成果としては、2020度までに収集した聖教会刊行のパンフレットを分析し、1930年代~60年代の英領マラヤ(シンガポール・マレーシア)における華人信徒の動態を解明した「近代東南アジアにおける「先天大道」の伝播―シンガポール同善社を中心に」(2021年5月刊行予定)がある。また、英領マラヤから大陸中国へ横断的に移動し伝道を行う西洋人宣教師に着目し、宣教師による中国民衆宗教理解について分析した。これにより、本研究課題である今後東南アジアにおける華人と宗教教団の議論を把握するにあたり、植民地統治の視点に立つ人々との視点の差異を明らかにすることができよう。その成果は、学習院大学人文科学研究科『研究年報』「表象としての近代中国の民衆宗教―宣教師からみた“救世団体”」(2021年3月刊行)にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度(2020年度)は、1月より始まる新型コロナ感染の拡大によって、海外調査を全く行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、実質的には本格的な調査を行うことができずにいたものの、日本国内でできうる資料整理や分析を行い、調査に向けての前段階となる準備や研究成果の発表を行うことができた。本課題の計画と下記の方策に基づいて、今後も継続的に進めていきたい。 1.マレーシア・シンガポールの日本軍占領期(1940年代)からマラヤ独立期の新聞史料をデジタルアーカイブズやオンライン購入によって収集し、東南アジアにおける華人の宗族組織・宗教や近代中国の教団や民間組織に関する研究文献を集める。 2.これまでシンガポール・マレーシアにて収集していた中国民間宗教文献のデジタル保存、目録を作成している。特に刊行年代と収集地によって伝播の足跡を追うことができ、今後の収集調査の足掛かりとなる。 3. 東南アジア・台湾・中国大陸にて精力的に資料を収集した酒井忠夫氏の蔵書の目録化を継続的に進めている。約3万点以上を数える宗教研究文献、道教資料、民間宗教文献の横断的な目録を作成することによって、日本における民衆宗教資料保存の把握の一助となるだろう。 4.マレーシア・シンガポールに10か所以上の拠点をもつ同善社の支部である聖教会では、春秋および夏季に各拠点のメンバーが集合して祭礼を行っている。新型コロナ感染によって開催が縮小されているものの、引き続き継続して連絡をとり詳細を確認している。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナのワクチン接種の進行状況により調査可能であると見込まれる。また国内で収集・調査したデータの整理・リサーチした史料の購入を進めたい。
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