2022 Fiscal Year Annual Research Report
International Comparative Study of Radical Christian Thought in 1960s-1970s
Project/Area Number |
20K00078
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
村山 由美 東洋大学, 東洋学研究所, 客員研究員 (70364966)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 急進的キリスト教 / 田川建三 / 大学紛争 / 民衆宗教 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、主に二つの方向で調査と分析を行った。 まず、国際基督教大学(ICU)に所蔵されている、同大の大学紛争にかかわる資料を閲覧し、紛争過程のより正確な把握を試みた。この作業により、ICUの紛争全体における田川建三の位置づけが明確になり、当時の田川の思想の歴史的性格を浮き彫りにすることができた。 つぎに、田川建三や高尾利数による1960~70年代のテクストを、同時代の宗教思想史的文脈のなかに位置づけるべく、同時代に展開していた「民衆宗教」をめぐる研究との比較を試みた。村上重良や安丸良夫らによって推進された民衆宗教の研究は、過去の宗教者の姿を通じて体制への批判や対抗の可能性を探ろうとした点で、田川らの仕事と通底するところがある。それだけでなく、田川のテクストに見られる強い主体へのこだわりは、民衆宗教の教祖たちの生活史に一貫して流れる強力な思想性を抽出しようとした安丸らの姿勢と共鳴するものであった。その一方で、田川による「類比」の思想は、歴史研究をよりアクチュアルなものとしようとする試みとしてユニークなものであったと考えられる。 研究期間全体を通じて、田川建三を中心とする戦後日本の急進的キリスト教思想が、当時の大学紛争を通じてどのように生み出されていったのか、そしてそこに含まれる現代的意義と問題点がどこに見出されるのかを検討した。また、キリスト教をめぐって語られたこれらの思想が、同時代の諸思想とどのような関係にあるのかを考察し、田川らのテクストを戦後思想史の文脈に接続する作業を行うことができた。
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