2022 Fiscal Year Research-status Report
林文慶と近代シンガポール華人社会における「国家と宗教」観および社会進化論の影響
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20K00085
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
住家 正芳 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60384004)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 林文慶 / Lim Boon Keng / 魯迅 / 孔教 / 尊孔 / 進化 / シンガポール |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度も、コロナ禍のためシンガポール等、国外での資料収集ができなかった。そのため、国内にて収集可能な資料によって研究を実施した。まず、2021年度に引き続き、魯迅と林文慶との対比を手がかりとして、林文慶の宗教理解および進化についての捉え方の同時代的な位置づけを探った。進化思想についての林文慶の理解を、『新青年』に代表される同時代の進歩的な知識人の進化理解と比べると、林文慶の進化理解は時代遅れな「優勝劣敗、弱肉強食」的な理解を引きずったものと見えてもしかたのないものであった。また、儒教に批判的な魯迅からすると、林文慶は儒教を称揚する「尊孔」の権化のような存在であり、前時代的な人物であった。たしかに林文慶は康有為に発する孔教運動の賛同者であり、儒教をあくまでも「宗教」であるとする林文慶の儒教理解も康有為に共通するものであった。だが、林文慶のこうした儒教および宗教についての理解は、康有為の影響というよりも19世紀後半から形成されてきた西欧の宗教研究の知見に学んだものと考えられる。そこで本研究では、The Straits Chinese MagazineやThe Straits Timesなどの刊行物に掲載された林文慶の論文および林文慶の動向に関する記事を検討することで、林文慶の宗教論の展開やキリスト教に対する態度の変化を検討した。林文慶はある時期から明確なキリスト教批判を打ち出し、キリスト教の擁護者と論争を展開している。こうした論争を検討することで、林文慶の宗教理解に同時代の西欧の宗教研究がどのように影響しているのかを探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度もコロナ禍のため国外での資料収集を実施することができず、国内で収集可能な資料のみの分析にとどまらざるを得なかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
シンガポール等国外での資料収集を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度もコロナ禍のため国外での資料収集を実施することができなかったため次年度使用額が生じた。2023年度にはシンガポール等国外での資料収集を実施し、次年度使用額を使用する計画である。
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