2023 Fiscal Year Annual Research Report
14-15世紀における朝鮮の儒葬受容に関する総合的研究
Project/Area Number |
20K00086
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
篠原 啓方 関西大学, 文学部, 教授 (90512707)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 朝鮮 / 韓国 / 朱子学 / 儒教 / 家礼 / 葬 / 墳墓 / 碑 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題「14-15世紀における朝鮮の儒葬受容に関する総合的研究」の調書に項目として立てた①「墓のデータベース」、②墓制の地上構造・地下構造の把握、③文献と朱子家礼との比較、④碑石様式の変遷について、調査の内容と成果の概要を以下に述べる。 ①は、2023年の文献調査および夏の現地調査に基づきリストに追加した。ソウル・京畿道地域の士大夫墓のうち、被葬者の死亡年・埋葬年が明確なものは211基となり、当初の予想を遙かに超える数となった。リストは、被葬者名・生没年・埋葬年・位置・石造物の有無・上空から見た配置図(グーグルアース)を項目として整理した。②は、上記の士大夫墓の方位や石造物の配置を検討した。墓の方位は様々で、丘陵や稜線の方向など、地形が重視されている。墳丘は方形をなし、最下段に石をめぐらせたものが多いが、15世紀半ば以降、石築の使用が減り、墳丘は円形へと変化していく。一方ソウル・京畿道地域の士大夫墓のうち、地下構造が発掘調査されたものはなかったが、地位のさほど高くない者の墓にも『朱子家礼』の内容の一部が実践されていた例が確認され、広く儒葬が受け入れられていたことが分かった。 ③は、15世紀代に生きた士大夫の著作(文集、『朱子家礼』注釈書)を精査し、内容を分析したが、士大夫墓に言及したものはほとんどなく、議論が盛んでなかった可能性がある。また一部の著作は、後孫が既存の詩文や正史の記事を収集・整理したものであり、独自の記述が乏しいものもあった。④は、韓国の現地調査によって15世紀代の士大夫墓関連資料十数基の資料を得た。墓碑は、15世紀半ばを過ぎていくつかの様式に定型化していくことが分かったが、特に荷葉・蓮蕾を表現した朝鮮独自の碑首の起源と意味の考察が課題となった。碑文には葬礼の期間などが記されており、『朱子家礼』の記述に忠実たらんとした痕跡がうかがえた。
|