2020 Fiscal Year Research-status Report
the Bible as the voice of God according to the Cappadocian fathers
Project/Area Number |
20K00087
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
土井 健司 関西学院大学, 神学部, 教授 (70242998)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 神の声 / テイア・フォーネー / ニュッサのグレゴリオス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ニュッサのグレゴリオスが「神の声」というものをどのように考えていたのかを明らかにすることであるが、そこで「テイア・フォーネー」の用例を徹底的に調査し、全用例を一つひとつ考察することで、その用法を確定することに集中した。その結果、以下のことが判明した。 1)ニュッサのグレゴリオスが「テイア・フォーネー」を使うとき、例外なしに、聖書のことを指している。聖書全体、福音書など個々の文書いずれか、また神の言葉、イエスの言葉など様ざまではあっても、「聖書」を指して使われている点に例外はない。普段「聖書」というと書かれた文書として捉えがちであるが、むしろ「生きた声」として捉えられていたといえる。 2)「テイア・フォーネー」が何かしら働きをなすときには、その働きの現在性が意識されている。それは、おそらく礼拝の場における聖書朗読のことであって、礼拝において神は会衆に向かって「語る」のであり、また「教える」のであり、「約束する」等などの働きをなす。声というものの現在性と力が意味されていたといえる。 以上のテーゼを立て、論文をひとつ発表した。なお新しくグレゴリオスの説教「『これらの一人にしたことは私にしたこと』について」の冒頭の聖書朗読とこれについての導入部分を考察することで、聖書の言葉、聖堂において朗読された神の言葉の力強さがいかに意識されていたのかが垣間見られることが分かった。 以上研究実施計画の主たるところは果たした。ただし実施計画では近接概念との比較に着手する予定であったが、これには着手できていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ニュッサのグレゴリオスの「テイア・フォーネー」の用例と用法に限れば研究は十分に行えたが、近接概念との比較について着手できておらず、また他のカッパドキア教父の用例と用法についても着手できていないことが、この自己評価の理由となる。 近接概念による比較については、近接概念の絞り込みに手間取っており、そのための有効な方法を模索中となるが、さしあたって思いつくものをもとにTLG で検索をかけていき、挽回する予定としている。
|
Strategy for Future Research Activity |
「テイア・フォーネー」の近接概念の絞り込みを一定の方法論をもちいて実施するのではなく、「テイア・グラフェー」、「フォーネー・イエスー」等思いつくものをもとにTLG を検索し、用例を収集し、テクスト分析を実施する。その過程で、さらに何かよい方法論を思いつくことを期待したい。なおその一つとして、グレゴリオスの説教冒頭を考察することで、朗読された聖書の言葉の力強さが確認できる可能性があることは、今回の論文執筆の過程で気づいた点である。これも合わせて研究する。以上を前期に集中して実施して、後期はこれらのアイデアを他のカッパドキア教父の研究に適用して実施する。
|
Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍のため出張旅費が使用できず、資料収集も十分には行えないでいた。また本務校でのオンライン授業などに忙殺され研究が遅れ気味となり、研究費の執行に遅れが出た理由となる。 2021年度は、大型のディスプレイの購入、さらに関連図書の購入、資料収集(19世紀に出版されたテクスト等)のための旅費、文具、PC関係用具、資料整理のアルバイト謝金として使用予定である。
|