2021 Fiscal Year Research-status Report
the Bible as the voice of God according to the Cappadocian fathers
Project/Area Number |
20K00087
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
土井 健司 関西学院大学, 神学部, 教授 (70242998)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神の声 / ナジアンゾスのグレゴリオス / バシレイオス / テイア・フォーネー |
Outline of Annual Research Achievements |
21年度は、カッパドキア教父のうち、カイサレアのバシレイオスとナジアンゾスのグレゴリオスの二人を対象として、「神の声」(テイア・フォーネー)の用例と用法を研究した。その結果、この二人は、ニュッサのグレゴリオスと異なって、この概念を積極的に捉える用例はなく、用例数も限られていた。 ナジアンゾスのグレゴリオスについては、TLG を対象として検索したところ、有効な用例としては七例のみにとどまった。そこでこれらを調べたところイザヤ書の引用として三つ、ヨハネ福音書におけるイエスの言葉として一つ、哲学者ポリュピリオスの言葉を指す例が一つ、そして音声の問題を述べる箇所が一つ、最後は「神の声を授ける」と父グレゴリオスを称える箇所が一つとなる。この最後の用例の場合、具体的に意味するのは説教のことと思われる。以上については、「ナジアンゾスのグレゴリオスにおけるtheia phone の用例と用法」と題した研究ノートを発表した(『神學研究』第69号、119―126頁)。 バシレイオスについては、テイア・フォーネーの用例として有効なのは四例にとどまった。詩編における神の語り、創造物語冒頭の「光あれ」という神の言葉、楽園で聴かれた神の声を指すが、一つ興味深いのは四つの福音書を指して「神の声」と呼んでいる箇所であった。とは言えここではこの事実のみを確認できるにとどまった。なお他に聖書における「神の声」は文字通りの音声ではないのであって、アレゴリカルに解釈する必要があると説くテクストも確認された。これらはニュッサのグレゴリオスの「神の声」のテクストを際立たせるものであること、また他の有効な概念について調査する必要も確認された。以上をもって、日本基督教学会近畿支部会において研究発表「カッパドキア教父における「神の声」の用例と用法」を行った(2022年3月17日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年間で、ニュッサのグレゴリオス、カイサレアのバシレイオス、ナジアンゾスのグレゴリオスの三名における「テイア・フォーネー」の用例と用法について予定通り研究を行うことができた。ただ「テイア・フォーネー」以外の概念、たとえば「フォーネー・テウー」(神の声)などバリエーションを検討して調査・研究の必要が確認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
22年度は、まずは予定通りカッパドキア教父における『雅歌』の解釈を確認するが、とりわけニュッサのグレゴリオスの『雅歌講話』を中心に研究を展開したい。 なおカッパドキア教父における「フォーネー」の用例について確認しており、バシレイオスでは525例、ナジアンゾスのグレゴリオスでは161例、そしてニュッサのグレゴリオスでは1018例あることが分かっている。これらの結果を踏まえ、どのように研究を絞って実施していくのかは検討したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で出張が予定通り実施できなかったこと、また書籍など資料の入手に手間取っていることが主な理由となる。 出張については状況が回復しつつあり、また資料入手についてもすこし目途がたってきたので、予定通りに行くものと思われる。
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