2022 Fiscal Year Research-status Report
Moments of the Enlightenment and Modernity
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20K00096
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長尾 伸一 名古屋大学, 経済学研究科, 名誉教授 (30207980)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近代西洋思想史 / 科学史 / 社会思想史 / 複数世界論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は過去半世紀に及ぶ内外での文脈主義的な研究が描き出してきた18世紀像と、現代思想から見た「モダニティ」の起源という、対立した二つの啓蒙理解を、申請者の研究を基礎に、マニュスクリプト、社会史、デジタル資料などに基づく現在の実証研究の水準に即して再検討する。それによってヨーロッパ史固有の文脈を超える啓蒙のグローバルな普遍性を①懐疑主義、複数世界論と日常世界の自律化というユーラシア史的共通性と②現代世界をも動かす知の科学化とデモクラタイゼーション(デモスの自己統治化)という、二種類のモーメントに見出すことで、啓蒙の人類史的な遺産を明らかにすることを目的とする。 本年度は以下の点を明らかにした。 1複数世界論に関する論点を整理し、現代物理学を参照しつつ、可能世界論として中世、初期近代哲学で議論されてきたものが、現代科学によって複数的な世界の構成として再現していることを明らかにした。2以上に関連して、可能世界論と比較して決定論的、一元的世界論と思われるニュートン的世界についても複数世界論から導くことができることが判明し、この点が18世紀科学における経験主義的・ニュートン派と数学的・大陸派(ライプニッツ、最小作用の原理)の分岐となっていることが示唆された。3東洋思想との比較について、朱子学の自然哲学がこのような複数世界論的な視点から再構成でき、その点で西洋の「創造の哲学」に対する「生成の哲学」として対比可能であることが明らかになった。両者ともに「永遠・有限・単一」というアリスとテレス哲学に対抗しつつ、複数世界論的な現代科学との親和性では後者の方に優位性がある。3初期近代思想史と社会理論を対比した結果、初期近代の契約論、全面譲渡の概念を進化論的な視点から再検討する可能性があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も感染症のため予定した資料の実地調査が行えなかったが、それをECCO,EEBOなどのオンラインアクセス可能な電子データの活用や、各種遠隔会議によって補うことで、計画の進捗についてはおおむね予定通りとなっている。 本年度の成果の一部は公刊予定の論文数点としてまとめており、以下の英文論文についてはすでに国際誌に掲載されている。 Shinichi Nagao, Science, Metaphysics, and the Hand of God: the case of Thomas Reid, Journal of Scottish Philosophy, Volume 21, Issue 1, March, 2023, 21(1), pp. 35-52 また本年度に公刊された『啓蒙思想の百科事典』(代表者編集責任)の「刊行にあたって」、「総論」および「各章総論」にも研究成果の内容を反映させている。さらに来年度に執筆予定の論文でも公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も当初の研究計画に従い予定通りに遂行するとともに、可能であれば資料の実地調査を行う。 具体的には、1複数世界論に関しては、可能世界論との関係で数学の形而上学的意味を考察するとともに、ライプニッツの可能世界論の再解釈を試みる。2知の科学化については、ニュートンにおける「実験」の意味を研究史の精査によって再検討するとともに、人工言語、人間の対自然行為と紐づけできる演算可能な記号体系としての科学の形成について、17世紀、18世紀における言語論の展開を概観する。 3デモスの自己統治については、自然法学、社会契約論の原典(プーフェンドルフ、ホッブズ、ロック、ルソー)に基づく再解釈を行い、ヘーゲルの中期精神哲学講義における行為理論との関係を解明する。4可能であれば以下の現地資料調査を行う。*エジンバラ大学における道徳哲学講義ノート類*グラスゴー大学マクローリン文書*アバディーン大学バークウッドコレクション等*関連する大陸の文書類(ベルリン国立図書館等)
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Causes of Carryover |
感染症のために予定していた資料の実地調査が行えなかったため、次年度使用額が生じた。これについては次年度に実施する予定である。なお研究計画については他の手段で補ったため、進捗はおおむね予定通りとなっている。
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