2020 Fiscal Year Research-status Report
古代末期におけるHumanitas概念の「革新」についての思想史的研究
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20K00099
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
出村 和彦 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 教授 (30237028)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アウグスティヌス / humanitas / 人文学 / 罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古代末期におけるhumanitas概念を、古典とキリスト教の両方の原典に基づいて思想史的に解明することを目的とする。古典のキケロ(前1世紀)から始め、ラテン教父たち、とりわけアウグスティヌス(354-430)における人間の弱さや罪を見つめるhumanitas概念の革新についての精査を通じて、古代末期の源流思想から人類共通のhumanitas概念を洗い出すものである。 本年度は、3年計画の第1年目で最新の研究状況をフォローアップし、様々な資料を目配りして検討すべき資料の補充を図り、読解研究を進めた。ただし、コロナ禍により、海外の資料を直接手に取って検討したり対面での討議は滞った影響で、今年度の成果としては、従前から手掛けていたアウグスティヌス『詩編注解』担当部分(86,87編)の翻訳・注・解説を完成・公刊すること(教文館『アウグスティヌス著作集』)や、事典の項目(「信仰と美学」)の寄稿(丸善出版『美学の事典』)にとどまっている。とはいうものの、アウグスティヌスの『詩編注解』原典から、1)民衆向けに説教されたテクストと2)説教のための研究的草稿(口述筆記)とにおける文体や強調点の相違から彼の人間観を立体的に理解する手ごたえを得たのは収穫であった。本務校の講義等を通じて、本研究のキーテクストともいうべき『自由意志』第3巻の検討には従事できた。ただし、当初主力を注ぐことを目論んでいたキケロのhumanitas概念の再検討についてはあまり進めることができなかった。なお、「信仰と美学」を執筆を通じ、人間の近代日本の転換期の「心」の問題に取り組んだ漱石夏目金之助の「哲学」探求が、西洋古代末期humanitasの「革新」解明の思想史的研究にも比較上有益であるという重要な視点をを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本課題研究のスタートとCovid-19感染症の最初の広がりが重なり、本務校の研究活動制限レベルに基づいて新たな研究に着手できず、その後も、海外渡航はまったくできず、再度の緊急事態宣言等の発出で国内移動制限で出張もできなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究交流の停滞はできる限りオンラインを活用する等で解消して、通常に近い形での研究推進へ戻す工夫をしつつ、手元にこれまで以上に資料を集めて、その読解や分析の作業により集中する。成果の発表の形態や場所を新たに開拓する。
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Causes of Carryover |
Covid-19感染症拡大のパンデミック状況で、当初予定していた国際学会の出席や国内学会出張が全くできなかったし、本務校へ研究者を招待してのシンポジウムのような研究交流も開催できなかった、また、図書購入等の備品充実計画も実際手に取って検討することができず停滞してしまったことによる。次年度は遅れを取り戻すべく、まず図書の整備に力を注ぐ。ワクチン接種が済んで国内外の移動が解禁されたころには英国ないしオーストラリアへの出張を再開したい。オンラインでの研究交流の進展を図るために工夫にも予算を振り向けることも検討する。
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Research Products
(2 results)