2021 Fiscal Year Research-status Report
Collaborative Research for Historical Study on Jacque Derrida's Seminars
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20K00102
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
西山 雄二 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (30466817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀井 大輔 立命館大学, 文学部, 教授 (80469098)
宮崎 裕助 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40509444)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ジャック・デリダ / 脱構築 / 責任 / 現代思想 / 現代哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は昨年度に引き続きオンライン配信の形式で連続セミナーを計5回開催し、動画記録を編集してネット上で公開した。視聴者は研究者のみならず、学生や一般まで幅広い層に及んだ。セミナーの内容は、「アカウンタビリティ/レスポンシビリティ──会計学の脱構築」「可塑性の哲学──カトリーヌ・マラブー入門」「カトリーヌ・マラブーの哲学」「ジャン=リュック・ナンシーについて語る会」「ジャック・デリダ『歓待I』を読む」である。 研究成果の公刊は好調で、西山・宮﨑はコロナ禍における人文学者の著述をまとめた『いま言葉で息をするために─ウイルス時代の人文知』(勁草書房)を刊行した。西山・亀井はブルガリアの雑誌БРОЙ第22号に論考を掲載して、デリダ特集号に寄与した。本研究メンバーが世話人を務める「脱構築研究会」では、オンライン・ジャーナル「Supplements」が2022年3月に創刊された。 西山は、カトリーヌ・マラブー『抹消された快楽─クリトリスと思考』(法政大学出版局)を翻訳し、日仏哲学会の企画にて、著者を交えて国際セミナーを開催した。女性的なものの可塑性をめぐる本訳書は女性的な身体と思考の関係に関する斬新な着想を示した。個人研究室の紀要Limitrophe(リミトロフ)を創刊して、若手研究者らと論考や翻訳を21本掲載した。亀井は共著『東アジアにおける哲学の生成と展開──間文化の視点から』(法政大学出版局)に、デリダと九鬼周造に関する論考を寄稿した。宮﨑は単著『ジャック・デリダ──死後の生を与える』(岩波書店)が第12回表象文化論学会賞を受賞し、その書評パネルも同学会第15回研究発表集会にて開催された。 以上、2021年度もオンライン配信を駆使して活動を展開し、論考・翻訳・発表のすべての面で、デリダ、マラブー、ナンシーの研究に関して多大な成果を上げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も新型コロナウイルス感染症拡大のため、海外渡航が不可能であったため、フランスのデリダ資料庫における遺稿・草稿の調査・分析、国際会議「Derrida Today」(フランス)への参加が実現できなかった。海外・国内への旅費が使えなかった分、図書・資料、オンラインセミナー用の機材に予算は充てられ、有効に活用された。 計5回開催したオンライン配信の連続セミナーは好評で、各回30-80名ほどの参加者がいた。また、動画記録は適宜編集して、ネット上で公開しており、研究成果の新たな発信方法となっている。 翻訳に関しては、単行書として、マラブー『抹消された快楽』を刊行することができた。また、デリダ『死刑II』『生死』『メモワール』の翻訳作業が進められた。 本研究メンバーが世話人を務める「脱構築研究会」では、若手研究者が主導してオンライン・ジャーナル「Supplements」が創刊された。成果刊行の媒体がまたひとつ増えたことは研究基盤整備として有効である。 ジャン=リュック・ナンシーが2021年8月に逝去し、彼の思考をめぐる追悼セミナーを開催し、『思想』2021年12月号で追悼号を企画した。その後、国際的な学術シンポジウムの準備に入り、2022年9月に開催するべく調整を進めている。 2021年から準備を始めた『デリダ読本』(法政大学出版局)については、内容構成や執筆者の確定などの準備が進められた。デリダ没後20年に向けて、彼の思考の核心やその哲学史上の存在意義をあらためて明確にし、さらに現在や将来の世界においてどのような新しい可能性をもつのかについて、「脱構築」思想のラディカルさ、そのポテンシャルを再発見し、再主張するような論集となる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、今後も海外渡航や海外研究者の招聘がきわめて困難であることが予想される。本研究の目的のひとつは国際的なネットワーク形成である。海外のデリダ研究者と連携して、脱構築研究の双方向的なネットワークを整えることが目指されている。渡航が許される状況になれば、海外での資料調査や研究交流を再開させたい。 昨年から延期になっていたヘクター・G・カスターノ(台湾・国立中山大学)による講演「ジャック・デリダによる中国語」をオンラインで実施する。デリダと東アジアの関係をめぐって、(表意/表音)文字と音声の視座から論じていただく。 関連する催事としては、9月に日仏文化会館にて、ジャン=リュック・ナンシーのための国際的な学術シンポジウムを準備している。今回は日仏の研究者が共同して、ナンシー哲学の核をなす「共同性」「意味」「世界」などのテーマで発表と討議をおこなう予定である。 翻訳に関しては、デリダ『死刑II』『生死』『メモワール』の作業を引き続き進め、順次刊行していく。翻訳刊行された際には、これまで同じく、合評会を開くことで、研究成果を一般に広く公開するように努める。 デリダ没後20周年の2024年に向けて、『デリダ読本』(法政大学出版局)の準備を継続させる。大御所から若手まで日本のデリダ研究の総力を結集し、新たにデリダ思想を蘇らせる土台を築き上げるこの論集は本研究の最終的な成果の一つとなる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大により、海外への渡航を実現することができず、旅費を使用することができなかった。その分、オンラインによる国際セミナーの開催など、十分に研究活動は展開されたものの、次年度繰越金が発生した。
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Research Products
(22 results)
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[Book] 抹消された快楽2021
Author(s)
カトリーヌ・マラブー、西山 雄二、横田 祐美子
Total Pages
186
Publisher
法政大学出版局
ISBN
978-4588011337
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