2020 Fiscal Year Research-status Report
蓋然説と宣教:在スペイン史料調査を踏まえたカトリック日本宣教の思想史的意義
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20K00107
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
折井 善果 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 准教授 (80453869)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蓋然説 / イエズス会 / キリシタン / インテレクチュアルヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、カトリック普遍主義が世界宣教においてどのように自己正当化の理論を考案・実行していったのか、という問いを、スペインで発見した新出史料の事例を通じて考察することにある。具体的には、16世紀前半以降ヨーロッパ神学において発達したProbabilism(蓋然説)と、宣教活動の前進とヨーロッパ自然法・教会法の遵守との間の葛藤から生じたDissimulation(偽装)、Mental reservation(内部留保)、Equivocation(惚け)と名付けられる精神的行為との相関関係を、日本宣教の事例を通じて明らかにすることにある。分析資料は主にスペインおよびマニラに存在し、日本の迫害下における司祭身分の偽装の是非等に関する興味深い内容を含む。それらの資料の整理・保存をおこなうことも本研究の課題である。 本研究開始直前から、渡航予定国が新型コロナウィルス流行に伴うロックダウンに入り、いまだ海外調査を行うことができないため、本研究は今年度大きな制約を受けた。しかし電子データで入手する限りでの資料を検討・再検討したことが、大きな発見につながることもあった。具体的には、これまで管見の限り本邦で紹介されたことがなく、世界に2冊と言われていた日本イエズス会版(通称キリシタン版)の、第3冊目の所在を確認したことである。この資料は迫害下における行動指針についての内容を含むことから本研究課題に密接に関連する。またそのプロベナンスや欄外への書き込みなどは、17-18世紀ヨーロッパにおける東アジア研究というより大きなテーマへと本研究を接続しえる可能性を、期せずして拓くこととなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始直前から、新型コロナウィルスの流行に伴い渡航予定国のロックダウンが始まったため、当初予定していた資料調査は未だ実現できていない。しかし予期せず別の場所で新資料を確認し、その分析によって本研究課題の問いにアプローチできる可能性がひらけてきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、新しく所在を確認したキリシタン版の分析に傾注する。資料は電子データでの閲覧となるが、ライブラリアンとのコンタクトはすでに築いている。当初予定していたスペイン・フィリピンでの資料調査のほうは、無論渡航の可否にかかっている。しかしオンライン・リアルタイムによる閲覧の機会を打診するなど、あらゆる手段を講じて資料の全貌を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス流行による渡航予定国のロックダウンにより、すべての資料調査が中止され、旅費の支出がなかったため。これは次年度以降の渡航時に使用する。
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