2021 Fiscal Year Research-status Report
蓋然説と宣教:在スペイン史料調査を踏まえたカトリック日本宣教の思想史的意義
Project/Area Number |
20K00107
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
折井 善果 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (80453869)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イエズス会版 / キリシタン版 / 蓋然説 / 宣教 / マルティン・デ・アスピルクエタ / サントスの御作業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度から続く渡航規制のため、本研究開始時に想定していた在外資料調査が不可能であった。しかし、昨年度末にフランスにおける所在を確認した、世界で第3冊目となる日本イエズス会版『サントスの御作業』(1591年刊)に関して、所蔵館員の助力を得てオンライン上で情報を授受することにより、その成果を国内に向けて公開することができた。日本イエズス会版の近世グローバル・ヒストリーにおける重要性については海外においても注目が集まっており、本年度はオランダにおいても一点の所在が確認されている。研究代表者は主にヨーロッパにおけるそれら当該資料を扱う研究者と綿密なネットワークを築き、次年度9月に国際シンポジウムをライプツィヒ大学と共催することとなった。したがって、本年度はそのための準備作業にも専心した。 また、「蓋然説と宣教」という本研究課題のテーマに密接にかかわる、16世紀カトリック倫理神学者マルティン・デ・アスピルクエタ(Martin de Azpilcueta、通称ナバーロ博士)を原著者とするCompendium Manualis Navarri (ナバールスの告解提要)の日本イエズス会版(1597年刊)の文献学的分析にも専心した。同刊本は、マニラで1980年代に発見された世界で唯一の刊本であるがその後およそ40年にわたって分析がほとんどなされてこなかったが、研究代表者は、分析の結果、1594年アントワープ版が、日本イエズス会版の典拠である可能性が高いことを論証した。アスピルクエタとその著作については現在ドイツのMax Planck研究所が国際的プロジェクトを組織しており、同研究所との協力関係のもとで分析は進められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
調査についての物理的制約を受けながらも、資料の分析と、その結果の内外への公表という両側面において、十分な研究成果を上げることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始3年目にあたる来年度は、まず第一に、本年度おもに分析した二点の日本イエズス会版の現地調査を遂行し、紙や印圧などの物理的分析を行うことによって、本年度の研究成果を敷衍したい。さらに、蓋然説の形成とイエズス会日本宣教との相関関係を考えるうえで重要な事例として浮上した、迫害下における司祭身分偽装・隠匿をめぐる議論について、在外関連資料のさらなる収集につとめたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により海外渡航調査・発表がすべて不可能になったため。来年度に国際学会をドイツにて共催するにあたり、日本から当該分野の先端研究者を招聘するための費用に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)