2020 Fiscal Year Research-status Report
Intellectual historic study of the argument about succession for females and members of the female line of the Imperial House in the Imperial Household Law(1889) establishment period
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20K00109
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
大川 真 中央大学, 文学部, 教授 (90510553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 公太 神戸大学, 人文学研究科, 講師 (40802773)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 皇位継承 / 女性天皇 / 女系天皇 / 旧皇室典範 / 正統論 / 池辺義象 / 神皇正統記 / 小中村清矩 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍によって2020年度は当初予定していた調査が一切出来なかった。経費は研究書や基礎資料の購入に多くを充てた。コロナ禍で様々な厳しい条件や制約のなかで、オンラインでの研究会も、2021年2月19日、3月24日の2回開催することができた。 研究代表者の大川真は、論文「18・19世紀における女性天皇・女系天皇論」(SGRAレポート90号, pp.72-83,(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会、2020年11月)を発表した。当該論文は、旧・皇室典範(1889年制定)の成立前後の思想史的状況の解明を目的にし、具体的には民権派結社・嚶鳴社内の論争の分析、また男系男子継承主義者の井上毅に思想的な材料を提供した小中村清矩の言説を分析した。その結果、洋学系知識人、国学系知識人はぞれぞれ一枚岩ではなく、内部に大きな意見の相違があったこと。また小中村清矩は、前近代の皇統論(水戸学など)を意図的に筆削・変形させた上で、女性天皇=「摂位」論を創出したことを明らかにした。当該論文は本研究課題の核心をなす問いと密接に関わっており、初年度から着実な成果を挙げたと評価できる。また論文「新井白石の南北朝論」(『奈良に蒔かれた言葉と思想』5号、pp.19-30,公立大学法人奈良県立大学ユーラシア研究センター,2021年3月)も前近代の皇統論を考える上で重要な成果と言える。 分担者の齋藤公太は「池辺義象の皇位継承論」と題して、神道宗教学会第74回学術大会(2020年12月5日、於國學院大學・Zoom開催)にて研究発表を行った。当該発表では、国学者である池辺義象の『日本法制史』、『皇室』をつぶさに検討し、池辺において、三種神器と皇位継承との関係がどのように説かれていたか、また『神皇正統記』はどのように受容されていたのかについて報告がなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で当初予定していた資料調査は一切出来なかったが、オンラインで研究会を2021年2月19日、3月24日の2回にわたり開催することができた。この研究会では、研究代表者、分担者の研究成果の発表を行うだけではなく、関心のある研究者にも呼びかけ参加してもらい、多くの有益な質疑が寄せられた。 代表者の大川真は、論文「18・19世紀における女性天皇・女系天皇論」(SGRAレポート90号, pp.72-83,(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会、2020年11月)を発表し、また分担者の齋藤公太は「池辺義象の皇位継承論」と題して、神道宗教学会第74回学術大会(2020年12月5日、於國學院大學・Zoom開催)にて研究発表を行い、厳しい条件下でも着実に成果を挙げたと言い得る。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍が収束すれば当初の計画に掲示していた2020年度、また21年度の資料調査を一部でも開始したいと考えていたが、2021年度も難しい状況であると予想される。したがって以下のタスクを重点的に本研究を進めていく。 1,2021年度日本思想史学会大会(11月開催)にて、本研究に関わるパネルセッションを企画し、実行すること。発表者には代表者の大川、分担者の齋藤のほかに、法制史、憲法学の専門家に加わってもらうことをすでに内諾済みである。 2,研究成果のグローバルな発信を企図して、大川は2020年度の既刊論文「論文「18・19世紀における女性天皇・女系天皇論」を加筆修正し、英語に翻訳して、学術雑誌に掲載すること。
3,分担者の齋藤は、池辺義象などの近代国学者を対象に、皇位継承論や『神皇正統記』の受容の実態解明をより進めること。
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Causes of Carryover |
年度末の申請で部局内の処理が間に合わなかったため。次年度の研究書購入に充てたい。
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[Book] 日本思想史事典2020
Author(s)
日本思想史事典編集委員会、日本思想史学会
Total Pages
744
Publisher
丸善出版
ISBN
978462130458-7
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