2021 Fiscal Year Research-status Report
Intellectual historic study of the argument about succession for females and members of the female line of the Imperial House in the Imperial Household Law(1889) establishment period
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20K00109
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
大川 真 中央大学, 文学部, 教授 (90510553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 公太 神戸大学, 人文学研究科, 講師 (40802773)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 皇室典範 / 皇位継承 / 女性天皇 / 女系天皇 / 男系男子継承主義 / 皇統論 / 正統論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は研究上大きな進展があった。 まず特筆すべきは、代表者の大川真、分担者の齋藤公太、また国士舘大学の成瀬トーマス誠により、2021年11月7日は日本思想史学会2021年度大会にてパネルセッション「近現代の皇位継承をめぐる思想史的諸問題」を開催したことである。大川は「「1848年改正オランダ王国憲法における王位継承条文の訳出」と題して、欧米憲法で初めて逐条邦訳された1848年改正オランダ王国憲法が日本に紹介される際に、嫡出継承が規定された条文がどのように訳出されたのかを検討した。また齋藤は「国学者の律令研究と女性・女系天皇―継嗣令の解釈を中心に―」と題して、近世以降の律令研究、とりわけ継嗣令の注釈を手がかりとして、明治期の国学者の背景にあった女性・女系天皇観を解明した。最後に成瀬が「憲法学の議論における女性天皇と「伝統」」と題して、女性皇族の即位可否をめぐる現在の議論と現行憲法との間にある緊張関係を指摘した。 その他、大川はグローバルな研究発信を意識して、研究論文「Eighteenth- and Nineteenth-Century Debates on Female and Female-Lineage Emperors(『紀要(哲学)』64、2022年3月)を発表した。この論文は旧皇室典範成立の前夜における洋学者、国学者の議論を解明し、結果として、女性天皇の即位をめぐって洋学者対国学者といった単純な対立図式ではなく、それぞれのグループ内において「伝統」概念めぐって意見の相違があったことを紹介したものである。 また齋藤は、藝林会令和3年度学術大会(2021年10月)にて、「『六代勝事記』と『神皇正統記』における承久の変(乱)」と題して発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度は日本思想史学会の年次大会にてパネルセッション発表を行い、当該分野における最新の研究成果を公開することが出来た。その成果は2022年度において学会誌等で活字化する予定である。またパネルセッション発表を行ったことによって、最終年度の成果のまとめに向けて、課題を明らかにすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は本研究のまとめを行っていく。代表者の大川は、現在の所、ヨーロッパ憲法が旧皇室典範に与えた影響を、各国憲法条文の邦訳作業を検討することを通じて明らかにしていきたいと考えている。また江戸期の女性天皇の即位儀式(大嘗祭)が、当時の朝廷や幕府の人々からどのように捉えられたのかを考察していき、前近代と近代の皇位継承論の連続・不連続を解明していく予定である。分担者の齋藤は、明治期の国学者、法制史学者の律令制研究を考察の中心に置き、旧皇室典範の成立に与えた影響を解明していく予定である。
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