2020 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ革新主義思想の一系譜:アングロ・カトリシズムと多元的共同体主義
Project/Area Number |
20K00111
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐々木 一惠 法政大学, 国際文化学部, 教授 (80547787)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | アメリカ史 / 思想史 / アングロ・カトリシズム / ジェンダー / セクシュアリティ / 社会主義 / 共同体主義 / 宗教史 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の本年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、アメリカ合衆国でのアーカイヴ調査の実施が難しい状況であったことから、予定を変更し、国内で入手可能な資料を用いて主に2年目に予定していた以下の研究を行なった。 セツルメント運動におけるアングロ・カトリシズムと共同体主義 聖十字架修女会(1884年に米国聖公会の女性信者の信仰組織として設立)の会員であり、またアメリカを代表するセツルメント・ハウスの創設者でもあった3人の女性(エレン・ゲイツ・スター、ヴィダ・ダットン・スカッダー、メアリー・キンズベリー・シムコヴィッチ)の活動を取り上げ、彼女たちのセツルメント活動(ハル・ハウス、カレッジ・セツルメント、デニソン・ハウス、グリニッジ・ハウス)と信仰の関係性を分析した。そこから、彼女たちのジェンダー観がアングロ・カトリシズムの神学や社会観と結びつく形で、社会主義的な有機的共同体主義へと展開していった過程を明らかにした。この研究に関しては、以下の形で発表した。 (1)佐々木一惠「聖十字架修女会の会員とセツルメント運動―生と活動の様式としてのアングロ・カトリシズムー」『ジェンダー史学』第16号(2020年):21-35頁。 (2)Motoe Sasaki, “Creating a Cooperative Community through Prayer and Activism: Ellen Gates Starr, Vida D. Scudder, Mary Kingsbury Simkhovitch and the Episcopal Laywomen’s Order,” Virtual AHA (2021). (注:2021年1月にシアトルで開催が予定されていたアメリカ歴史学会の年次大会が新型コロナの感染拡大に伴い中止となったことから、代わりに開催されたオンライン大会)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由としては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、予定していた米国での調査が実施できなかったことがある。一方、国内において入手可能な資料を用いて、2年目以降の研究を進めることができた。現在は、以下の研究に着手し、論文として発表する準備を進めている。 アンチモダニズムの一潮流としてのアングロ・カトリシズムと共同体主義 アメリカにおけるゴシック・リバイバルを、アングロ・カトリシズムとの関係から捉えることで、個人主義・合理主義・唯物主義の潮流に抵抗するアンチモダニズムの一潮流としての有機的な共同体主義思想の出現とその特徴を取り上げ研究を進めている。具体的には、建築家ラルフ・アダムズ・クラムの宗教観に基づく歴史意識と建築観を、同時期の英国におけるアングロ・カトリシズムやギルド社会主義の展開との関係を踏まえながら検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度実施できなかったThe Archives of the Episcopal Churchでのアーカイヴ調査ならびにThe Archives of the Society of the Companions of the Holy Crossでのアーカイヴ調査を行うとともに、19世紀後半のアングロ・カトリシズムの環大西洋的展開に関する調査・研究に着手する。また、本研究の中心的な課題であるアメリカにおけるアングロ・カトリシズムと革新主義思想との関係性、ならびに宗教を経由した公共善に基づく有機的・社会主義的共同体主義の潮流の存在を明るみにしていくための研究整理(思想史・宗教史・社会運動史・ジェンダー・セクシュアリティ研究)に着手していく。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の感染拡大により、予定していたアーカイヴ調査が実施できなかったため。
|