2020 Fiscal Year Research-status Report
A Critical Insight into the Shift of Japan's Narrative Paradigm
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20K00115
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
奥田 博子 関東学院大学, 人間共生学部, 教授 (10343063)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 記憶 / 東日本大震災 / メディア・フレーム |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に行った本研究の具体的内容としては、まず、全国紙四紙『朝日新聞』『日本経済新聞』『毎日新聞』『讀賣新聞』に『東京新聞』を加えた各新聞データベースを用いて、「古里」「震災遺構」「追悼式」「フクシマ」「風評被害」といったキーワード検索を始めた。それに加え、東日本大震災が起きた2011年3月11日をめぐる新聞記事や、震災・津波・原発事故に関連する文献資料の収集も始めた。 収集した資料に基づいて、全国紙の東日本大震災をめぐる報道が(1)地域社会の再建という課題に重ね合わされる、(2)人口減少による町や村の社会の衰退を問題提起する、つまり、「社会」のあり方を問いかける、そして(3)被災当事者や遺族に流れる時間へと思いを馳せる心の復興よりむしろ、被災地の防波堤や道路を耐震補強するインフラの復興が前景化されるメディア・フレームになっていることを検証している。 その過程では、「フクシマ」という名前で呼ばれるようになった問題が科学技術、社会、そして人間の時間(つまり、人類史の時間)を超える射程について反芻することを促していること、また、人びとの生活を豊かにする優れた道具であり、人びとの幸福に資する科学技術が人間の制御しえない結果を引き起こすものになることが可視化されたことによって、「科学技術の進歩」という信仰が「未来への不安」に置き換わっていることが浮き彫りになる。 原発事故の結果として、人びとは直感的に理解のできない、未知なるものに対して強い警戒心を抱くようになった。その一方、東日本大震災からの10年は災害の教訓が記憶の風化と戦う歳月でもあった。「本当の災害は災害が忘れ去られたときから始まる」(ラファエル『災害が襲うとき』、2016年)と指摘されるように、メディア報道分析からは戦後日本の「原子力安全」神話は災後日本の「放射線安全」神話に書き換えらていることが浮かび上がってくる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の計画当初予期していなかった新型コロナウイルス感染拡大のために二度の緊急事態宣言が発出されたことで、昨年度は当初計画していた福島県立図書館及び福島市立図書館を拠点にした地方紙『福島民報』『福島民友』の新聞記事や郷土史料の収集を行うことができなかった。 そのため、前述した研究実績の概要に記したように、昨年度は全国紙四紙『朝日新聞』『日本経済新聞』『毎日新聞』『讀賣新聞』と『東京新聞』の新聞データベースを用いたキーワード検索や関連記事の収集、そして2011年3月11日から10年を期して刊行され始めた震災・津波・原発事故の記録やその検証報告書、体験者・当時者の手記や証言といった文献資料の収集を主として行った。 このように収集した新聞・雑誌記事や文献資料を基に、東日本大震災をめぐる全国紙の新聞報道やナショナルな語りのメディア・フレームを分析し始めた。また、その分析結果を当該年度の研究成果の一部として国際学会で発表したり、学術誌への投稿論文として発表する準備も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策としては、コロナ禍のもと、予期していないことが起こる可能性を十分考慮しつつ、当初の計画に変更を加えながら調査研究を遂行できるよう最大限努力することに尽きる。 今年度は、今年度計画している岩手県立図書館及び盛岡市立図書館を拠点にした地方紙『岩手日報』の新聞記事や郷土史料の収集に加え、昨年度実施できなかった福島県立図書館及び福島市立図書館を拠点にした地方紙『福島民報』『福島民友』の新聞記事や郷土史料の収集を行うことを目指す。
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Causes of Carryover |
昨年度は、前述した今後の研究の推進方策に記したように、本研究の計画当初予期していなかった新型コロナウイルス感染拡大のために計画していた福島県立図書館及び福島市立図書館を拠点にした地方紙『福島民報』『福島民友』の新聞記事や郷土史料の収集を行うことができなかった。そのため、今年度は、昨年度実施できなかった調査研究を臨機応変に行う計画である。
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Research Products
(3 results)