2020 Fiscal Year Research-status Report
Ancient Greek and Judaeo-Christian Traditions in Hobbes
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20K00117
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
梅田 百合香 桃山学院大学, 経済学部, 教授 (20424947)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ホッブズ / 古代ギリシア / トゥキュディデス / ガッサンディ / 哲学と歴史 / 政治的教育 / エピクロス主義 / 政治の時間性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度にあたる2020年度は、ホッブズの古代ギリシア認識を本格的に分析するための準備作業として、原典分析作業と並行して、ホッブズとガッサンディおよびホッブズとトゥキュディデスの思想の関係を考察した英語圏とフランス語圏の先行研究の検討を集中的に行った。 哲学におけるホッブズの古代ギリシア認識を追求するには、反アリストテレスの立場とエピクロス主義への関心を共有するガッサンディの思想との異同が手がかりとなる。エピクロス主義を中心とした両者の比較検討については、G. Paganiniによるの一連の詳細な研究がある。 調査・分析の結果、現時点での作業仮説として、ホッブズは古代のエピクロス主義に対しては一定の距離を取っていることがほぼ明らかとなった。ただし、ホッブズと同時代のエピクロス主義は古代のそれと同じではなく、ガッサンディは新しいエピクロス主義を展開し、ネオ・エピクロス主義の立場を構築した。このネオ・エピクロス主義に対するホッブズの立場をさらに検討する必要がある。 歴史におけるホッブズの古代ギリシア認識に関しては、トゥキュディデスとホッブズの思考様式の共通性を洗い出す作業を行った。その研究成果の一部を、「不測の事態と政治の時間性―ホッブズとトゥキュディデスの視点」『ウェブマガジンSYNODOS-シノドス-』(2020年12月9日。https://synodos.jp/politics/23953)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、ホッブズの古代ギリシア認識を探るために、ホッブズとガッサンディ(哲学)およびホッブズとトゥキュディデス(歴史)という2つの具体的な分析対象を2つの分野において有し、それぞれ異なった方法でアプローチしている。後者については成果の一部をウェブマガジンに小論として発表した。前者については、成果の発表には至っていないが、調査・分析は予定通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に調査・分析した研究成果の一部を盛り込んだ単著を、2021年度に公刊する予定である。 また、機械論的唯物論について語るフランス時代のホッブズの書簡を分析し、ホッブズとガッサンディの思想の異同について、哲学的分析と思想史的分析の二方面からさらに検討を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大により、海外渡航は原則禁じられ、国内においても外出自粛が求められたため、資料調査にかかる費用(国内および海外出張旅費)を使用することができず、書籍購入費も当初予定額に満たなくなった。資料調査は、感染が落ち着き次第、2021年度に行う予定であり、この次年度使用額はそのために繰り越し、2021年度請求額と合わせて、資料調査のために使用する予定である。
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