2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00118
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
浜田 秀 天理大学, 文学部, 教授 (30299151)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 皆川淇園 / 開物学 / 恵広本 / 易原 / 易原指麾 / 易原説解 / 律運 / 音記籌色図 |
Outline of Annual Research Achievements |
静嘉堂文庫・筑波大学附属図書館の開物学関係資料のカラー撮影、関係論文の複写・易原指麾巻一の入力、関係図書のpdfデータ化などを予定に沿って進めた。これにより、以下の実績を達成することができた。 論文「公巌『易原指麾』巻一 翻刻と解説」(一)・(二)では、公巌の書いた『易原』注釈書である『易原指麾』の巻一、「九疇」を扱った部分を翻刻・解説した。解説では『易原指麾』の成立プロセスを、筆録者恵広の書き込みから分析し、巻毎の成立年代を明らかにした。 論文「『易原指麾』巻一 翻刻と解説(一)」では、公巌の今ひとつの『易原』註解書、『易原律運説解』を取り上げた。『易原律運説解』は、『易原』の「律運」説部分についての解説である。「律運」とは認識の先験的形式である「九疇」と十二律とを身体において統合したものであるが、上記論文ではこれについて初めて解説を行い、「九籌図」から「九籌十二画填圜成律呂象図」が、また「九籌十二画填圜成律呂象図」から「十二律去律余見旋機玉衡図」が構成される演繹的関係にあることを示した。 論文「皆川淇園門人公巌口授・恵広筆記『易学開物小箋記聞』について(下)」では公巌の『易学開物小箋記聞』を翻刻し、開物学で使用される「音記籌色図」について述べた。「音記籌色図」とは音義分析のために使われる独自の発音記号である。これは「画象」という易の爻を元にしたパーツの組み合わせで表現されるが、記号の配置及び描き順に関して細かい指定がある。論文では恵広の残した写本の徴証から、この実態をほぼ再現することができた。特に画象の描き順が明らかになったことは、字義解析のプロセスを解明する手がかりとなるであろう。また論文にはできていないが、関西大学中村幸彦文庫、南砺市立図書館宮永文庫、龍谷大学、日本近代文学館、舞鶴市糸井文庫等に、従来知られていなかった開物学関係資料が所蔵されていることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和二年度は『易学開物小箋記聞』の後半部分の註解を行うこと、静嘉堂文庫のカラー複写、恵広本の入力等を行う予定であった。これについては「皆川淇園門人公巌口授・恵広筆記『易学開物小箋記聞』について(下)」(『近世京都』4号 1頁~44頁 2021年03月31日)を発表するなど、当初の目的を達成することができた。また天理大学から学術助成を受けることができたため、当初の予定以上に作業が進み、全四本の論文を作成、公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在コロナの流行下にあって、文庫や図書館等の実施調査は困難な状況にある。よって研究の主力を、実地調査から、すでに入手している淇園の開物学テクストの入力・校訂・コーパスの作成へとシフトしていきたい。入力作業についてはアルバイトの助力によって効率よく行う。入力後のデータは、浜田が諸本と比較校訂し、データの精度を上げていく。これらはコーパスとして使用可能となり、開物学用語の意味の確定、解説の精度を挙げることに利用できる。具体的にはすでに入力をはじめた淇園の『易原説解』『易原指麾』の後続の巻の入力・翻刻を中心に進めていく。
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Causes of Carryover |
2020年度は、天理大学から研究助成を受けたため、当初の予定より研究を進めることができた。一方残金額については僅かであり、無理をして使用する必要が無かった。コーパス入力に関わる費用として、有効に活用したい。
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