2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00118
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
浜田 秀 天理大学, 文学部, 教授 (30299151)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 皆川淇園 / 開物学 / 恵広本 / 易原 / 易原指麾 / 易原説解 / 律運 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は『易原』の「九籌合十二律説」を取りあげた『易原指麾』巻二と、『易原説解』のうち、『易原律運説解』の二冊の翻刻・解説を行った。これにより、「九籌合十二律説」に対して、二冊の異なる注解が紹介できたことになる。 『天理大学学報』258輯掲載論文「公巌『易原指麾』巻二 翻刻と解説(一)」では、『易原指麾』の書入から、恵広が文化九年から文化十一年にかけ、開物学の講義を師公巌よりうけたこと、おそらくは文化十三年から巻二を起筆し、文化十四年四月にひとまず完成したこと、完成後も師説に対する補足、批判の書込を行い、それは天保五年にまで及ぶことを明らかにした。また『易原指麾』巻二には、淇園の原著に無く、公巌独自のものと見られる易図が大量に含まれている。これについては『天理大学学報』259輯掲載論文「公巌『易原指麾』巻二 翻刻と解説(二)」で写真版により紹介することができた。これにより、開物学の独自の易学的思考法が明らかになることが期待される。 『山邊道』62号掲載論文「公巌『易原律運説解』翻刻と解説(二)」では、公巌の今ひとつの『易原』註解書、『易原律運説解』を取り上げた。調査の結果、同一のものが、前田育徳会尊経閣文庫『易原精義』と秋田県立図書館根本文庫『九籌合十二律説解』として、それぞれ所蔵されていることを見いだした。 なお校訂の過程で、架蔵恵広本が、尊経閣本、根本文庫本に比較して、もっとも誤脱が少ないことを明らかにできたこと、少ないながらも散見された恵広本の誤りを、尊経閣本、根本文庫本で訂正できたことも成果の一つと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和三年度は、入力テクストの検討を行い、『易原指麾』巻二と、『易原律運説解』の翻刻・解説を完成させ、三本の論文を完成させた。昨年度と合わせ七本の論文を完成することができた。 また予算の前倒しを行い、開物学テキスト入力の集中的に作業を行った。その結果、恵広本の『易原指麾』巻二、『易原律運説解』、『易学開物解』、『易原蓍列説解』上巻・中巻の入力を行うことができた。昨年度の『易原指麾』巻一の入力とあわせ、六冊の入力を行うことが出来た。 さらに筑波大学所蔵の淇園関係の複写を行った。これらの作業により、恵広本開物学テクスト読解の精度をあげることができた。 淇園の開物学に関わる注解書類は、いくつかの文庫に分散して収蔵されている。これらの伝来と相互関係を調べることが課題であるが、架蔵恵広本、尊経閣文庫、根本文庫に公巌由来の同じ注釈書が伝来していることは、詳しい検討に値する。これらの所蔵者が何者で、公巌とどのような関係にあったのか、現在引き続き調査を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度同様、コロナの流行下にあって、文庫や図書館等の実施調査は困難な状況にある。よって研究の主力を、すでに入手している淇園の開物学テクストの入力・校訂・コーパスの作成、関係資料の複写等を中心に行いたい。入力作業については前年度同様アルバイトの助力によって効率よく行う。入力後のデータは、浜田が諸本と比較校訂し、データの精度を上げていく。関係資料の複写については、淇園原著の写本類、また弟子関係の資料を探索し、開物学解明の手がかりを入手、集積していきたい。
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Causes of Carryover |
2021年度も、前年同様天理大学から研究助成を受けたため、順調に研究を進めることができた。一方残金額については僅かであり、無理をして使用する必要が無かった。コーパス入力等に関わる費用として、次年度有効に活用したい。
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