2020 Fiscal Year Research-status Report
Formal imaginations in modern music. The analysis of discursive and compositional strategies in Messiaen, Dutilleux, and Boulez.
Project/Area Number |
20K00133
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Research Institution | Tokyo College of Music |
Principal Investigator |
藤田 茂 東京音楽大学, 音楽学部, 教授 (30466974)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 現代音楽 / 20世紀音楽 / フォルム(形式) / メシアン / デュティユー / ブーレーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は20世紀の芸術音楽史に大きな足跡を残したフランスの3人の作曲家、メシアン(1909-1992)、デュティユー(1916-2013)、ブーレーズ(1925-2016)を対象に、その言説と作品草稿の調査から、音楽作品のフォルムの造形において、彼らがいかなる想像力を働かせたかを追跡するものである。 2020年度は、感染症の世界的蔓延により、予定していた国外での草稿研究が実施不可能となったため、上記3人の作曲家の言説の収集・整理、ならびに、音楽作品の分析に注力した。 メシアン、デュティユー、ブーレーズが音楽作品のフォルムを造形するにあたり、それぞれ「ステンドグラス」、「樹木」、「雲」という詩的イメージが重要な役割を果たしていることはすでに突き止めていたが、今年度の言説調査によって、それらの詩的イメージは、以下に記すように、彼らの具体的な創作手順と密接に関連していることが仮説として立てられるに至った。 作曲をするにあたって、メシアンは決して前から書き始めることなく、(ステンドグラスのパネルをそうするように)一定の音楽的まとまりを累積しつつ、それらをシャッフルして全体を造形する。デュティユーは、ほとんどの場合、前から書いてゆき、作曲が進行するにつれて(樹木がそうであるように)分岐・成長していく音楽的アイデアの総合を目指して全体を造形する。ブーレーズは、最初に手にした音楽的アイデアを(雲がたなびくように)あらゆる方向に引き伸ばしてゆき、その可動性が確保されるように全体を造形する。 今後、草稿へのアクセスが可能になりしだい、この仮説を検証・修正していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、年度中に国外での草稿調査を複数回、実施することを予定していたが、世界的な感染症の蔓延により、これが不可能になったことが研究の遅れにつながった。一方で、これまで注目してこなかった書簡のなかにも、各作曲家の創作手順についての重要な情報が含まれていることに気づき、言説の調査範囲を拡大することができた。一方の草稿研究の遅れと一方の言説研究の進展とを総合して、現在の進捗状況を「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は、言説の読み込みと作品分析のあいだを往復し、メシアン、デュティユー、ブーレーズが音楽作品のフォルムを造形する際の手順についての仮説をより精密なものにすることに注力する。草稿研究が可能になりしだい、それらの仮説を草稿上で検証・修正していく予定である。 上記3人の作曲家の草稿の大部分は非公開であり、国外の所蔵先での調査が必須であるが、国内からもアクセス可能なものも一部あることが分かった。音楽作品のフォルムの造形手順の解明に草稿研究が活かせるように、研究対象作品の変更も視野に入れている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた原因は、感染症の世界的な蔓延により、国外での草稿研究が実施不可能になったことである。これにより、草稿研究のための旅費、また、草稿研究に関連する物品費を次年度以降に繰り越して使用することとなった。今年度に実施予定であった国外での草稿研究は、年度をずらして本課題の研究期間内に実施する予定である。
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