2022 Fiscal Year Annual Research Report
田中栄三資料のカタロギングによる新派映画の基盤的研究
Project/Area Number |
20K00141
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
上田 学 神戸学院大学, 人文学部, 准教授 (80546143)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 映画史 / 映画学 / 演劇学 / 芸能史 / 日本文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、本年度も田中栄三資料の調査分析を通じて、田中栄三と日本演劇史、東アジア映画史との関係についての研究を進めた。特に本年度は研究最終年度にあたることから、成果の取りまとめと発信に重点的に取り組んだ。主要な成果として第一に、田中栄三が監督として活躍した日活向島撮影所の京都移転をめぐって、田中の自筆ノートを含む資料調査をおこない、移転の理由が関東大震災以前の日活の経営方針の転換にあったことを明らかにした。また、その研究成果を神戸学院大学人文学会第29回研究会で口頭発表したうえで、論文「関東大震災前後の日活向島 ―京都移転の理由について―」(『人間文化』53号)に取りまとめた。第二に、2021年に研究成果の一部として発表した論文「新派映画再考――生成、受容、伝播」(『映画学』34号)を、新たな田中栄三資料の調査分析を踏まえて、田中の義父にあたる鈴木要三郎に関する箇所等を中心に加筆し、さらに新派映画を研究する現代的意義を考察した序論も執筆したうえで、小川佐和子(北海道大学)との共編著『新派映画の系譜学 クロスメディアとしての〈新派〉』(森話社)に収録して刊行した。また同書には、明治大正期の新派映画を『日本映画作品大鑑1』(キネマ旬報社、1960年)の採録情報にもとづき目録化した谷口紀枝「新派映画一覧」も収録したが、その作成、校正に協力した。このような成果の取りまとめと発信から、本研究はその目的に対応する一定の成果を達成した。
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