2021 Fiscal Year Research-status Report
冷戦「文化プロパガンダ」再考:国務省教育文化局による文化プログラムの検証を通じて
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20K00147
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
福中 冬子 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (80591130)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 文化冷戦 / プロパガンダ / 西洋芸術音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、コロナ禍による渡航制限(とくに待機期間の設定)があり、2020年度に引き続き海外資料調査が出来ず、その意味で計画どおりの進捗がなかった。当初は、合衆国国務省教育文化局 The United States Department of State, Bureau of Educational and Cultural Affairsが、「文化プレゼンテーション Cultural Presentations」(1954年から1984年:別称President's Programs)の一環としてアフリカを除く世界全地域で展開した、芸術音楽(いわゆる「クラ シック音楽」)関係のプログラムの検証を行うべく、米国メリーランド州にある国立公文書館National Archives and Records Administrationに所蔵されている 資料を検証する予定だった。NARAは規模を縮小して再開したものの、渡航に伴う待機期間やそれに付随する費用に鑑み、米国渡航は不可能という結論に達した。代わりに、すでに発表されている研究の読み直しや、それらに掲載されている様々な種類の参考文献を網羅的に調査・再調査する作業に限定した。とりわけ、これまでは合衆国国務省によるプログラムのみに焦点を当ててきたが、当該プログラムをより広い文脈から検証する必要性もあると思い、同時期に英国政府が行なった冷戦文化プログラムに関する先行研究の調査を行った。この研究領域では、合衆国のケースほど多くの研究が著されているわけではないが、Paul Lashmar and James Oliver 1998やTony Shaw 2005、James Chaplan 2000などは、音楽そのものに関する記述は多くないものの、文化冷戦に関する構造が理解できる内容となっており、参考となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度から海外資料調査が一切できない状態であることが一番大きい。昨年度はアーカイヴは再開したものの、入国に伴う待機期間や航空券の高騰などで、渡航はほぼ不可能だった。代わりに先行研究の洗い直しや、視座を拡げて同時期イギリスの文化政策などの調査を行ったが、やはり当初の予定からは遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度の調査からの流れで、イギリスの冷戦期文化政策に関する資料調査も考えている。その場合は、イギリス公文書館に保管されているCultural Relations Department 関係の文書の調査を行うこととなる。
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Causes of Carryover |
当該年度および初年度予定していた海外渡航が出来なかったための繰越分。今年度は海外渡航を計画しており、高騰している航空券に鑑みれば、予算は適正に執行できると考えている。
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